2019 Fiscal Year Annual Research Report
生体内恒常性制御システムを標的とした、生活習慣病と慢性臓器障害治療薬の創出
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18H02602
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新藤 隆行 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90345215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神吉 昭子 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10397309)
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
桜井 敬之 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (80317825)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生理活性因子 / 生活習慣病 / 臓器不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病や慢性臓器障害の新規治療戦略のためには、生体内恒常性制御のメカニズムの包括的な解析を進め、病態の本質を解明することが不可欠である。我々は、生体内の恒常性維持と臓器間連携を司る、新しい「生理活性因子の情報制御システム」=「AM-RAMPシステム」を同定し、生活習慣病や慢性臓器障害の新たな治療標的としてAM-RAMPシステムに着目した。 アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張作用をはじめ、血管新生作用、抗酸化ストレス作用、抗炎症作用など多彩な生理活性を有する生理活性ペプチドである。我々はAMの機能の多様性を制御するメカニズムを解明するため、AMの受容体システムに着目した。AMおよびそのファミリーペプチドからなるカルシトニンスーパーファミリーの受容体である7回膜貫通型Gタンパク共役型受容体CLRには、RAMPと呼ばれる受容体活性調節タンパクが結合し受容体の機能を制御している。RAMPには1~3までのサブアイソフォームが存在する。 本研究では、我々のこれまでの研究基盤に基づき、心血管代謝システム疾患を中心に、AM-RAMPシステムの障害に伴い、生体内外からのストレスへの応答不全・破綻から引き起こされる病態のメカニズムを解明する。各病態に対して、抗体や低分子化合物を用いることで、AM-RAMPシステムの制御法を開発する。これらのアプローチにより、生活習慣病や慢性臓器障害などに対する新たな創薬につなげることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AMの生理機能は、AMの受容体活性調節タンパクRAMP2あるいはRAMP3によって制御されている。しかしながら、RAMP2とRAMP3の機能分化や病態生理学的意義の差異は不明であった。本年度の研究では、RAMP2とRAMP3について、胎生期から全身で遺伝子欠損させたマウス、あるいは成体において各組織特異的に遺伝子欠損を誘導できるマウスを樹立し、発生の異常や、成体での遺伝子欠損誘導後の脈管システムの変化を検討し、両者の機能分化を検討した。 RAMP2ノックアウトマウス(RAMP2-/-)は、胎生期に全身の浮腫や出血により致死となったが、成体での遺伝子欠損誘導後、血管炎や臓器障害が自然発症することから、AM-RAMP2システムは血管の発生と恒常性維持双方に必須である事が示された。 一方、RAMP3ノックアウトマウス(RAMP3-/-)は RAMP2-/と異なり正常に出生した。成体における術後リンパ浮腫モデルでは、血管、リンパ管特異的RAMP2-/-は共に、野生型マウスと比較して変化を認めなかったが、RAMP3-/-のみで浮腫の増悪を認めた。RAMP3-/-では、新生リンパ管数、血管数に変化はないものの、リンパ管の異常拡張、間質浮腫の増悪、炎症細胞浸潤の亢進が認められ、電子顕微鏡では、リンパ管内皮細胞におけるトコンドリアの空胞変性、繋留フィラメントの形成不全が特徴的に観察された。インドシアニングリーンを用いた耳介、尾部のリンパ管造影では、RAMP3-/-においてリンパ管ドレナージの不良が認められた。さらにRAMP3-/-では、腸管リンパ管による脂質の吸収遅延、乳糜の輸送障害が認められた。 以上の結果から、AM-RAMP2システムが発生段階の血管新生、成体での血管恒常性を制御しているのに対し、AM-RAMP3システムは成体でのリンパ管機能を制御している事がはじめて明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
癌の生命予後改善のためには、癌細胞を標的とした観点だけではなく、癌の増殖や転移に関わる血管やリンパ管、さらに癌微小環境や転移前土壌にも着目することが、新しい治療法の開発につながる可能性がある。 我々は、これまで血管拡張性ペプチドとしてとらえられてきたアドレノメデュリン(AM)が、血管、リンパ管の恒常性維持作用を有することを報告してきた。AMの生理機能は、主としてAMの受容体活性調節タンパクRAMP2あるいはRAMP3によって制御されている。我々はこれまでの検討から、AM-RAMP2システムが、血管の恒常性維持に働いている一方で、その機能破綻が癌の転移促進の原因となることを見出した。一方で、AM-RAMP3システムが、癌関連線維芽細胞(CAF)を活性化することにより、癌の悪性度を増悪させ、転移を促進させる可能性を見出した。したがって、RAMP2の選択的活性化、RAMP3の選択的抑制が、癌転移を抑制する新しい治療につながる可能性がある。 今後の研究では、これまでのRAMP2, RAMP3のノックアウトマウスの解析に加えて、RAMP2, RAMP3の過剰発現マウスなどを用いて、RAMP2による血管の恒常性維持、RAMP3によるCAFの活性化が、癌の転移におけるおよぼす影響とそのメカニズムを解明する。これらのマウスへの腫瘍移植モデルから、CAFの単離培養を行い、増殖や遊走性、細胞骨格、増殖因子分泌などの表現型を比較検討する。これらの結果を、AM-RAMP2システムとAM-RAMP3システムの機能分化や相互作用の解明につなげる。さらに、RAMP3-/-に対しAMを持続的に投与することで、AM-RAMP3システムの選択的阻害と、AM-RAMP2システムの選択的活性化状態を作り出し、癌転移抑制につながるか検証する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Endogenous calcitonin gene-related peptide deficiency exacerbates postoperative lymphedema by suppressing lymphatic capillary formation and M2 macrophage accumulation2019
Author(s)
Matsui S, Tanaka M, Kamiyoshi A, Sakurai T, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Dai K, Cui N, Wei Y, Tanaka M, Kakihara S, Nakamura K, Yamauchi A, Ishida K, Tanaka S, Kawamata M, Shindo T.
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Journal Title
Am J Pathol.
Volume: 189
Pages: 2487-2502
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of a novel model of central retinal vascular occlusion and the therapeutic potential of the adrenomedullin-RAMP2 system2019
Author(s)
Hirabayashi K, Tanaka M, Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Dai K, Cui N, Wei Y, Nakamura K, Iida S, Matsui S, Yamauchi A, Murata T, Shindo T.
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Journal Title
Am J Pathol.
Volume: 189
Pages: 449-466
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Pathophysiological significance of adrenomedullin-RAMP2 system in age-related macular degeneration2019
Author(s)
Tanaka M, Hirabayashi K, Iesato Y, Imai A, Toriyama Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Yamauchi A, Murata T, Shindo T.
Organizer
The Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO) 2019
Int'l Joint Research
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