2018 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ管、リンパ組織の可塑性を制御する生理活性脂質の解析と治療応用への基盤研究
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18H02605
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
馬嶋 正隆 北里大学, 医学部, 教授 (70181641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 義也 北里大学, 医学部, 講師 (40203187)
天野 英樹 北里大学, 医学部, 講師 (60296481)
細野 加奈子 北里大学, 医学部, 助教 (80532556)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生理活性脂質 / プロスタグランジン / 炎症 / LPS / リンパ管新生 / COX-2 / mPHES-1 / トロンボキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
病態時のリンパ管新生を制御する生体内活性物質の解析と治療への応用研究の必要性は極めて大きい。病態時のリンパ管新生を増強する生体内活性物質プロスタグランジン(PG)の役割について解析した。 慢性の持続する炎症をミミックするLPS投与腹膜炎モデルを作成し、増殖性炎症時の横隔膜組織におけるリンパ管新生について検討した。LPSをマウスの腹腔内に投与すると、滲出性の炎症が認められ、繰り返しLPS投与することにより、横隔膜にはマクロファージ、Tリンパ球が集積した、COX-2やその下流でPGE2を合成する最終段階を担う酵素である膜結合型プロスタグランジンE合成酵素(mPGES-1)が発現していた。リンパ管内皮マーカーであるLYVE-1、VEGFR-3で染色すると、持続する炎症に伴い横隔膜組織でリンパ管新生が認められた。COX-2阻害薬のcelecoxibの投与によりリンパ管新生が有意に抑制されることが確認された。mPGES-1のノックアウトマウスでも、野生型マウスに比べリンパ管新生が有意に抑制されることが確認された。このモデルのリンパ管新生はCOX-2を介して増強され、mPGES-1の増大を伴うことからPGE2が重要であることが推定された。 さらに同モデルにおいて、意外にもトロンボキサンの関与が明確になった。トロンボキサンの受容体であるTP受容体を欠損するマウスにおいては、野生型マウスに比べLPS投与による横隔膜組織でリンパ管新生が抑制された。所属リンパ節へのFITC-dextran(腹腔内投与)の流出も抑制されており、機能的なリンパ管新生がTP受容体を介して起きていることが明確になった。TP受容体を発現する細胞群は、T細胞、マクロファージであることを見ており、TP受容体のfloxマウスも完成したので、次年度に向けCreマウスとの交配も開始した。 乳糜管に関する実験も手技が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
慢性の持続する炎症をミミックするLPS投与腹膜炎モデルで、新規アラキドン酸代謝物のリンパ管新生への関与を明らかにすることができた。 これまでにトロンボキサンとリンパ管新生に関連性があることを報告した例はなく、新規治療標的として重要となることが判明した。 また、乳糜管の観察法を確立することができた。これは、リンパ管内皮細胞のマスター遺伝子Prox-1の活性化をGFP発現で見るトランスジェニックマウスであり、リンパ管は原則的にGreenの蛍光陽性となる。これにより、乳糜管を介した標識済みの脂質の動態を調べることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症に伴うリンパ管新生の評価は順調に進んでおり、なるべく早い段階での成果公表を行いたい(論文投稿、公開シンポジウム開催)。 乳糜管を介した標識済みの脂質の動態を調べ、肥満との関連性を評価していきたい。 そのほか、がんのリンパ節転移におけるTPシグナルの評価を行う。 また、シュレム管でのアラキドン酸代謝物のリンパ管新生、眼房水の産生、眼圧への関与を明らかにしていく。
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