2019 Fiscal Year Annual Research Report
脳リンパ流の生理とその破綻による高次脳機能低下メカニズムの解明
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18H02606
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安井 正人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90246637)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクアポリン / 脳のリンパ流 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.CARSを用いた脳組織の水動態の解析 我々は高い時空間分解能を持ち官能基識別能を有するCARS(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)顕微鏡を利用して脳組織内における水分子の動態を明らかにすることを目的として研究を進めた。更にCARS顕微鏡において同時に実現する多光子励起現象を利用し溶媒と溶質の両方を可視化するマルチモダル多光子顕微鏡を開発・応用することを試みた。これまでの解析から,主に水分子に由来する脳内のO-Hシグナルが脳組織内で均一ではなく不均一な分布を示すことが分かった。更にこれにアストロサイトを染色するSR101の2光子蛍光画像を同時に取得し重ねあわせることで,アストロサイトの構造との関連からこの脳内O-Hシグナル分布の様子を見て取ることができることが明らかとなった。 2.一価の銅によるAQP4水透過性の抑制 AQP4の活性を制御する因子を探索していく中で,一価の銅がAQP4の水透過性を可逆的に抑制することを発見した。この効果は,AQP1では認められないことから,AQP4に対して特異性があると考えられた。更に,点変異導入により,一価の銅の効果がC178をターゲットとしていることを突き止めた。 3.毛細血管へのアミロイド蓄積に対する影響 大脳皮質の100μmの矢状断切片を透明化し,AmyloGloと抗Aβ抗体(6E10)を用いてAβの蓄積を3Dで観察した結果,36週齢になると抗Aβ抗体で管状の構造が染色された。これは毛細血管でアミロイドの蓄積(脳アミロイド血管症,CAA)が生じていると考えられる。AQP4を発現している5xFADではその染色が断片的であるのに対し,AQP4を欠損した5xFADでは連続的に染色されており,AQP4の欠損はCAAの形成を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳組織の水分子動態の観測は,顕微鏡システムの改変があったため,多少遅れたが,マルチモデルシステムが完成したため,今後は一気に研究が進むことが予測される。一価の銅の効果を発見することができたので,最終年度は論文化に向けて研究を進めていく。
また、アルツハイマー病モデルにおいて,AQP4の欠損がCAAの形成を促すことを発見することができたので,最終年度はそのメカニズムを追求し,論文化を加速化させる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー病の病態生理に関するAQP4の役割が明確になりつつある。これまでの研究で,1年目は可溶性A betaの蓄積に対する影響,2年目は血管周囲におけるA beta蓄積への影響を明らかにしてきた。最終年度は,さらにそれらのメカニズムに関して追求していきたい。
CARS による脳組織の水動態の手法も確立しつつある。マルチモダルシステムの導入で,他のタンパク質の動態と同時計測することも可能となった。最終年度は浸透圧やAQP4の影響に関して解析を進めていきたい。
AQP4が一価の胴で可逆的に制御されうることを見出したことは,今後のAQP4の生理的意義を考える上でも大きなポイントになると考えている。最終年度は、細胞モデルにおいて,胴トランスポーターや細胞内シグナル伝達との関連も含めて検討していく予定である。
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