2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜におけるリン脂質の膜動態の分子基盤とその生理・病態的意義の解明
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18H02615
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀬川 勝盛 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (常勤) (20542971)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン脂質 / リン脂質移層分子 / 非対称性 / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、細胞膜リン脂質の非対称性の樹立・維持に関与するフリッパーゼについての生化学的特性を解析した。具体的に細胞内膜系に局在するP4-ATPase (ATP8A1, ATP9A, ATP9B, ATP10B, ATP11B)にFLAGタグを付加し、HEK293細胞に発現させ、抗FLAG抗体を用いて精製、試験管内でPtdSerを基質としたATPase活性を評価し、いくつかのメンバーにPtdSerに依存的なATPase活性の上昇が確認された。そこで、具体的にClass 1aとClass6に属するP4-ATPaseを全て欠損させたT-lymphoma株を樹立した。この細胞は、通常状態でよく増殖し、特に明らかな形態的な異常を示さなかった。次いで、フリッパーゼ多重欠損細胞の細胞膜リン脂質の非対称性を解析したところ、定常状態において、多重欠損細胞がPtdSerを露出しないことが明らかとなった。一方、スクランブラーゼを活性化させ、一過的にPtdSerを露出させると、多重欠損細胞は反応が収束した後も、PtdSerを露出し続けた。このPtdSerの異常な露出は、反応収束後2時間をすぎても回復されなかった。この結果は、定常状態におけるPtdSerの非対称性の樹立機構と、非対称性の樹立後の維持機構とが異なることを示した。それでは、この多重欠損細胞はどのように、細胞膜リン脂質の非対称性を樹立・維持しているのであろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に同定した細胞内膜系に局在するフリッパーゼと細胞膜フリッパーゼの多重欠損細胞を樹立し、その細胞膜PtdSerの動態の解析を行うことができた。その結果、多重欠損細胞が、一過的に露出したPtdSerを元に戻す活性がほぼ消失していることが明らかとなった。一方、多重欠損細胞は、定常状態においては、PtdSerの非対称性を樹立することができる。この結果は、定常状態におけるPtdSerの非対称性の樹立機構と、非対称性の樹立後の維持機構とが異なることを示した。それでは、この多重欠損細胞はどのように、細胞膜リン脂質の非対称性を樹立・維持しているのであろうか。PtdSerの非対称性の樹立と維持のメカニズムが異なることを示すことができた点で、本年度の研究が概ね、順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載の通り、樹立したフリッパーゼ多重欠損細胞を用いてGenome-wide CRISPR-Cas9 screenを行う予定である。
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Research Products
(5 results)