2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of molecular mechanism underlying S1P signal-mediated exosome release
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18H02623
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 俊一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40155833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊集院 壮 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00361626)
梶本 武利 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)
岡田 太郎 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80304088)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | S1P / スフィンゴシンキナーゼ / ホスホイノシタイド / エキソソーム / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
エキソソームは細胞間情報伝達の重要な手段として注目され、癌の悪性化に関与する微小環境形成やパーキンソン病などの病態の播種などにも重要であることが分かってきた。我々は最近スフィンゴシン1リン酸(S1P)の産生酵素スフィンゴシン・キナーゼ2(SphK2)が多小胞エンドソーム(MVE)に集積し、MVE上でS1P1受容体を持続的に活性化することがエキソソーム系MVEへの成熟に必須であることを発見した。多小胞エンドソーム(MVE)はリソソームと融合して分解経路をたどるか、また或るものは細胞膜と融合して内容物の小胞をエキソソームとして細胞外に放出される運命をたどる。一方で、SphKは酵母からほ乳類に到る真核生物でよく保存されており、リソゾーム(液胞を含む)/オートファギーの分解系の調節に重要な働きをすることは良く知られる。従ってSphK/S1Pシグナルはエキソソーム/リソゾームのスィッチに役割を果たしている可能性がある。一方で、これまでの国内外の研究からリソゾーム機能にはPKCやAKTなどのタンパク質リン酸化酵素が関与していることが知られる。そこでS1Pとこれらのタンパク質燐酸化酵素(protein kinase, PK)とのクロストークに照準を合わせ、各種PKの特異的基質をプローブに用い、S1Pによる活性化スクリーニングを行った。このスクリーニングの原理はPKの基質プローブがリン酸化を受けることにより引き起こされる構造変化を1分子FRETによる蛍光変化として検出するものである。このセンサープローブを用いて我々は、S1Pが直接protein kinase Cζ(PKCζ)と結合し、同酵素を活性化することを見出した。今後S1P/ PKCζシグナルを介したリソゾーム機能調節機構を解明し、S1Pシグナルによるエキソソーム/リソゾームのスィッチ機構を解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MVEはリソゾームと融合して内容物を加水分解しそれぞれの構成成分を再利用する系と、細胞膜と融合し内部の小顆粒をエキソソームとして放出する系の二つが存在する。酵母のような下等な真核生物ではMVEは全て液胞(リソゾームのオルトログ)と融合するが、ヒトのように進化した脊椎動物では細胞は常にエキソソームを血中に放出し細胞間情報伝達の重要な手段として活用することが知られる。昨年度までの我々の研究結果によりエキソソソーム系MVEの膜に存在するS1P1受容体が同オルガネラ近傍で産生されたS1Pにより持続的に活性化されることにより絶えずS1P1受容体に連関(カップル)したGiタンパク質が活性化を受け、アクチン重合を促していることを証明した。これらのメカニズムはS1Pシグナルに於いて受容体を獲得した脊索動物以降であることと考え合わせると進化論的に大変興味深い結果と思われる。また、今回の我々の発見はS1PがS1P受容体を介することなく直接PKCζと結合しこれを活性化することが示された。一方で、米国の研究者らによりPKCζはリソゾーム/オートファギー機能を調節するタンパク質であることが報告され(Ma et al. (2013) Cell 152, 599)、PKCζの活性調節機構に注目が集まっていた。今後S1P/ PKCζシグナルを介したリソゾーム機能調節機構を解明し、S1Pシグナルによるエキソソーム/リソゾームのスィッチ機構を明らかにしてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
様々なスフィンゴ脂質の代謝酵素が先天的に欠損すると、リソゾーム機能が阻害され、スフィンゴ脂質の中間代謝産物がリソゾーム内で蓄積し、罹患臓器の機能不全や精神発育遅滞など重篤な症状を呈するスフィンゴリピドーシスを発症することが知られるが、本態は尚不明である。特筆すべきは全てのスフィンゴ脂質は最終的にセラミド→スフィンゴシン→S1Pを経て代謝されることであり、スフィンゴリピドーシスに於けるライソゾーム機能不全にS1Pが関与する可能性が高い。また、学術的には、酵母からヒトまでのほぼ全ての真核生物でSphK/S1P系を用いてリソゾーム(液胞を含む)機能が調節され、脊椎動物から獲得したS1P受容体を用いてエキソソーム系エンドソームの成熟が調節されることから(我々の発見)、エンドソームの成熟とS1P作用機序に系統発生的に密接な関係が伺える。この意味においてS1P受容体を介さないS1P/ PKCζ系によるリソゾーム機能調節機構を確立することは系統進化論的にも重要な学術的意義を有する。今後の研究方針はPI3Pを始めとするホスホイノシタイドとこれに結合するPXドメインを有するRPK118に焦点を当て、RPK118結合酵素SphKの細胞内ターゲティング調べ、エキソソーム/リソゾームのスィッチ機構を明らかにしてゆきたい。
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