2019 Fiscal Year Annual Research Report
多彩な癌浸潤T細胞集団を包括的に再生し、自家腫瘍オルガノイドで評価する手法の開発
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18H02641
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 新 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (40361331)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞免疫応答 / iPS細胞 / 腫瘍浸潤T細胞 / 再生T細胞 / がんスフェロイド / 個別化再生T細胞治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は腫瘍への特異性とT細胞受容体(TCR)の多様性が保たれたTILを対象に、我々が既に報告したiPS細胞を介する抗原特異的T細胞再生の方法論を適用して、①TIL集団をT-iPS細胞化し、②そのT-iPS細胞集団を再生TIL集団化し、③腫瘍オルガノイド技術を用いて作出した自家腫瘍モデルを対象として治療効果を検証する研究である。 昨年度はTILを得られやすい大腸がん、非小細胞性肺がんを中心に複数の切除検体からTILを分離し、TIL集団を効率よく増幅する手法を開発した後にTCRレパトワの多様性データを取得した。また、複数の腫瘍塊から腫瘍スフェロイドを樹立した。スフェロイドとの共培養により、反応性が確認されたTILのTCRレパトワは比較的クロナリティと抗原特異性が保たれており、T-iPS細胞樹立のソースとして適していると考えられた。今年度は大腸がん由来の増幅TILを自家がんスフェロイドと共培養し、良好な免疫応答を示す複数クローンから複数のiPS細胞を樹立した。それらの複数のiPS細胞からCD8陽性T細胞を分化誘導し、自家がんスフェロイド特異的な免疫応答を示すことを確認した。また、それらのTILからTCR遺伝子をクローニングした後にiPS細胞に遺伝子導入し、CD8陽性T細胞へと分化させたところ、これらの再生T細胞でも自家がんスフェロイド特異的な免疫応答を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに複数症例からのTIL分離・増幅、がんスフェロイドの作成、TILとスフェロイドの反応性確認、反応性クローンのレパトワ解析などを実施し、再生T細胞の ソース確保とアッセイ系の確立が進んだ。TILのiPS細胞化は予想に比して困難であったが、複数の手法を試した結果、有望なものが絞り込めた。その結果、今年度に入ってからはTILからのiPS細胞樹立が順調に進み、CD8陽性T細胞への分化誘導と自家がんスフェロイドとの共培養による機能確認へと進んでいる。 以上の理由から、進捗は概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自家腫瘍スフェロイドに対する再生TIL集団のin vitroならびにin vivo抗腫瘍効果を評価する。引き続き複数症例複数クローンの再生TILと各症例の腫瘍スフェロイドとのin vitro共培養を基本に、腫瘍の認識、腫瘍反応性の増殖、腫瘍への浸潤、腫瘍の傷害性を評価し、再生TIL集団の抗腫瘍効果を評価する。腫瘍オルガノイドはin vitroで培養・保存できるのみならず、免疫不全マウスへの移植が可能であることも知られている。既にいくつかの患者由来スフェロイドを用いたin vivo腫瘍オルガノイドモデルの作成が進んでおり、in vivoの治療効果を評価したい。
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