2019 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変技術を応用したロタウイルスワクチンの新たなプラットフォーム
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18H02663
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (90324847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロタウイルス / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ロタウイルス(RV)は、乳幼児の急性胃腸炎の原因ウイルスである。本研究課題では、新規RV遺伝子操作系技術を駆使することで、ワクチンシードウイルスとなりうる組換えRVの開発を目的としている。本年度は以下の研究成果が得られた。 1)NSP遺伝子変異RVの作製 RV NSP1(抗インターフェロン作用)、NSP3(翻訳制御因子)、NSP4(エンテロトキシン)についてはウイルス複製ならびに病原性に関与することが報告されている。ヒトRVの性状解析のため、ヒトRV Odelia株における遺伝子操作系の開発を試みた。培養細胞にOdelia株由来全11分節ゲノム由来cDNAに加えて、合成促進因子であるネルソンベイレオウイルスFAST、ワクシニアウイルス由来キャッピング酵素、ロタウイルスNSP2、NSP5タンパク質を共発現させることにより、Odelia株の人工合成に成功した。この系を用いて、NSP1の変異体を作製し、NSP1のC末端領域がウイルス複製に重要な役割を担っていることを明らかにした。 2)マウスで増殖性の高い組換えRVの作製 RV感染には種特異性があり、サルRVやヒトRVはマウスでの感染、増殖性は低い。RVの病態を理解するため、マウスRVの人工合成系の確立を試みた。マウスRV(EW株)とサルRV(SA11株)とのリアソータントウイルスの作製に成功し、培養細胞での増殖能やマウスにおける下痢発症能について解析を行った。その結果、培養細胞において高い増殖性を示し、マウスにおいて下痢発症能が上昇したリアソータントウイルスの作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ヒトRVの遺伝子操作系を開発し、NSP1遺伝子変異ヒトRVの作製に成功した。また、サルRVをバックボーンとして、マウスRV由来の分節ゲノムを持つ様々なリアソータントウイルスの作製にも成功し、性状解析を行った。 上記の成果から、研究目的を達成する上で本年度の研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)NSP遺伝子変異RVの作製 引き続き、NSP遺伝子の複製・病原性に関わる機能領域に変異を加えた様々な組換えRVを作製し、in vitroおよびin vivoにおける性状解析を行う。 2)RVにおけるマウス感染モデルの開発 RV感染には種特異性があり、遺伝子操作系が確立されているサルRV(SA11株)は下痢症状を引き起こすものの、マウスでの感染、増殖性は低い。SA11株をマウスで継代することで、増殖能が向上したSA11株の分離を試みる。マウスに病原性を引き起こすマウスRVの遺伝子操作系の開発を行う。 3)ヒトRV株VP4、VP7遺伝子の分節ゲノム交換体の作製 ウイルス粒子表面に存在する2種の外殻タンパク質VP4、VP7がRVの主な抗原性を決定している。有用な組換えワクチンシードウイルスをバックボーンとし、異なる遺伝子型由来VP4、VP7遺伝子を持つハイブリッドウイルスを作製し、性状解析を行う。
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Research Products
(9 results)