2019 Fiscal Year Annual Research Report
単一の抗原特異的T細胞クローンを用いた自己免疫疾患治療法の開発
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18H02668
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河本 宏 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (00343228)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / 関節リウマチモデル / sk gマウス / RPL23a |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、単一の抗原特異性を持つクローンを用いて自己免疫疾患を治せるか」というテーマに取り組んだ。関節リウマチモデルであるsk gマウスの標的抗原の一つがリボゾームタンパクRPL23aであること、この抗原に特異的なTCR(R7-39)をだすヘルパーT細胞の単 一クローンで関節炎を誘導できることが坂口志文らにより報告されている。そこで本研究では、R7-39を発現するTregを作製し 、そのTregがskg関節炎を「予防できるか」さらに「治療できるか」をテストする。元々の計画では、1)人工的なTregとしてIL2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39Tgマウスを作製し、そのCD4T細胞を用いる、2)再生医療への応用を見据えてIL2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39TgマウスからiPS細胞を作製し、そのiPS細胞から再生したCD4T細胞の治療効果もテストする、という計画をしていた。しかし、IL2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39Tgマウス作製の遅れから、R7-39を発現する人工的なTregとして、R7-39をnTregに強制発現させる系を用いた。R7-39をnTregに強制発現にはレトロウイルスの系を用いた。内因性のTCRとの競合が問題になるが、R7-39- TCRが一定量発現していたため、これを用いて実験を行った。R7-39発現ヘルパーT細胞の単一クローンで誘導された関節炎と皮膚炎のモデルに対し、皮膚炎については予防的効果が認められた。進捗はやや遅れているが、一定の成果が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は単一の抗原特異性Tregが関節炎モデルマウスで治療あるいは予防効果を示すかどうかを検証した。L2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39Tgマウスを用いる系は作製が遅れており、nTregにレトロウイルスを用いて病原性TCRを発現させる系を主に進めた。 R7-39-Thを用いた関節リウマチモデルは既報に準じて作製した。すなわち、skgマウスとRagKOマウスを掛け合わせたマウスの胎仔肝臓前駆細胞にR7-39をレトルウイルスで導入し、RagKOマウスに移入してT細胞に分化させ、関節リウマチの発症を誘導した。この関節リウマチ発症マウスに、上記で作製したR7-39-Tregを輸注し、治療効果を測定した。 2019年度はまずnTregに単にR7-39-TCRを発現させる系を用いた。この場合、内因性のTCRの発現も残るため、抗原特異的な抑制効果はその分減弱すると考えられる。そのため、治療効果ではなく、まずは予防効果を測定することにした。同時にR7-39-Thを移入し、同日にR7-39-Tregを移入して、発症の予防効果の有無を調べるという方式をとった。 R7-39-Thを用いた関節リウマチモデルでは関節炎の他に皮膚炎も発症する。関節炎と皮膚炎の程度をスコア化して上記のTregの発症予防効果を見たところ、関節炎に関しては効果がみられるなかったが、皮膚炎は有意に抑制効果が見られた。 L2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39Tgマウスを用いる系が遅れていること、ゲノム編集を用いてnTregに病原性TCRのみを発現させる系の立ち上げが少し遅れており、病原性TCR 発現nTregは内因性TCRの発現が残るものを用いたという点で、計画通りに進んでいないと考えられた。 しかし、発症の予防効果がみられたということから、一定の成果があったと考え、「③やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は単一の抗原特異性Tregが関節炎モデルマウスで治療あるいは予防効果を示すかどうかを検証する。L2KO/CTLA4Tg/skg/R7-39Tgマウスを用いる系は作製が遅れており、nTregに病原性TCRのみを発現させる系を主に進める。具体的には、R7-39を発現するヘルパーT細胞(R7-39-Th)の投与で関節リウマチを発症するモデルに、R7-39を発現するTreg(R7-39-Treg)を投与することで予防あるいは治療効果が見られるかどうかを検証する。R7-39-Tregは、ゲノム編集を用いて内因性のTCRを除いた上でレトロウイルスでnTregにR7-39を強制発現させる系を用いる。 R7-39-Tregは以下i)ii)iii)の要領で作製する。i)まずBalb/cマウスよりnTregをソーティングで単離する。ii) nTregのTCRをゲノム編集法を用いて定常領域を欠失させることにより欠損させる。 iii) R7-39レトロウイルスにより導入した細胞を人工Tregとして用いる。こうして作製したTregとしての機能を関節リウマチモデルの系で調べる。 R7-39-Thを用いた関節リウマチモデルは既報に準じて作製する。すなわち、skgマウスとRagKOマウスを掛け合わせたマウスの骨髄前駆細胞にR7-39をレトルウイルスで導入し、RagKOマウスに移入してT細胞に分化させ、関節リウマチのおよび皮膚炎の発症を誘導する。この関節リウマチ/皮膚炎発症マウスに、上記i)ii)iii)で作製したR7-39-Tregを輸注し、治療効果を見る。治療効果が認められなかった場合は、R7-39-Tregを先に移入し、その後R7-39-Thを移入し、予防効果の有無を調べる。
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