2020 Fiscal Year Annual Research Report
BNCTにおける治療局所・全身性応答と治療奏効性、副作用のバイオマーカーの同定
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18H02693
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
益谷 美都子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (60238904)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | BNCT / バイオマーカー / 中性子 / マウスモデル / メラノーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
BNCT (boron neutron capture therapy:ホウ素中性子捕捉療法)はがんに対する放射線治療の一種であり、熱中性子とホウ素が反応してアルファ線を放出することを応用した治療法である。昨年本邦で初めて加速器型BNCTシステムが医療機器として承認され、ホウ素製剤10B-para-boronophenylalanine (BPA)とともに口腔がんが保険適用となった。BNCTでは、細胞レベルで線量分布のコントロールが可能であり、高い腫瘍選択性が得られるため奏効率の向上と副作用の軽減が期待されているが、治療の奏効性、副作用と関連するバイオマーカーの研究は十分には進んでいない。 本研究ではBNCT条件での治療照射下におけるがん細胞死応答に注目する。細胞レベル、マウスモデルでトランスクリプトーム、プロテオーム解析等から局所的及び全身性の細胞死や生存のマーカーとなる因子について、特に細胞外に漏出する炎症と関連するDAMPs分子に注目して同定する。主にがん細胞培養系を用いて、中性子線照射とホウ素製剤として10B-para-boronophenylalanine (BPA)を用いて照射後、早期応答に注目して、解析を行っている。 トランスクリプトーム、プロテオーム解析などよりHMGB1の細胞外漏出やGM-CSF遺伝子の発現上昇と細胞外漏出がそれぞれ複数のがん細胞株においてBNCT条件での中性子線照射後、24時間以内に誘導されることを見出し、その機序とバイオマーカーとしての意義を細胞培養系とマウスモデルにおいて検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析による応答性分子の解析については、ヒト口腔扁平上皮がんSAS細胞株を用いて、BNCTが誘導する細胞死の過程を検討した。同様なBNCT治療条件でBNCT治療の対象となるメラノーマのヒトやマウス細胞株において照射後、早期応答に注目して、解析を行っている。トランスクリプトーム、プロテオーム解析などよりHMGB1の細胞外漏出、GM-CSF遺伝子の発現上昇と細胞外漏出、受容体へのシグナル伝達について解析を進め、複数の論文にまとめている。また、がん種/がん細胞の共通性の変化と特異的な変化を調べつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も今年度に継続して、それぞれの有用なバイオマーカー候補分子群について短期におけるバイオマーカー候補動態変化と治療の奏効性、副作用について、治療局所と全身性影響として、組織学的、及び生化学的解析に基づき検討し、有効性の高いバイマーカー候補を絞り込んでいく検討を行う。
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