2019 Fiscal Year Annual Research Report
Drug development for intractable epilepsy based on ketogenic diet-derived metabolites
Project/Area Number |
18H02719
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 剛 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (40370134)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケトン食 / ケトン体 / 難治性てんかん / 治療薬開発 / 乳酸脱水素酵素 / 電位依存性カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
既存薬が効かない「難治性てんかん」の治療薬開発は重要である。この難治性てんかんには「ケトン食療法」と呼ばれる食事療法が有効であることが知られている。そこで本研究では、ケトン食の作用メカニズムに基づく治療薬開発を目指して、以下2項目を実施した。 1、我々はこれまで、ケトン食の作用点として乳酸脱水素酵素を同定し、乳酸脱水素酵素阻害により抗てんかん作用が生じることを明らかにしてきた(Science, 2015)。乳酸脱水素酵素は、LDHAとLDHBの2つのサブユニットからなる酵素である。そこで本年度は、慢性てんかんモデルマウス(海馬硬化症を伴う側頭葉てんかんモデル)における、海馬内の2つのサブユニットの発現量変化を調べた。その結果、慢性てんかんモデルではLDHAの発現量が上昇するのに対し、LDHBの発現量は変化しないことが分かった。さらに、海馬内のLDHAを阻害すると、てんかん発作が抑えられた。これらの結果を統合すると、「てんかん発症によりLDHA発現量が上昇し、LDHA阻害によりてんかん発作が抑えられる」ことが明らかとなった(Epilepsia, 2020)。 2、ケトン食による主要代謝産物として、ケトン体が知られている。我々はこれまで、ケトン体が電位依存性カルシウムチャネルを阻害し、抗てんかん作用を示すことを明らかにするだけでなく、より強力なケトン体アナログも見出している(Epilepsia, 2017)。一方で、電位依存性カルシウムチャネルを特徴づけるα1サブユニットとしてP/Q, N, L, R, T型が知られているが、その作用サブユニットは不明である。そこで本年度は、海馬スライス標本からのパッチクランプ記録下で、電位依存性カルシウム電流を単離し、サブユニット選択的阻害剤を用いることで電流成分を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ケトン食の神経作用機構を明らかにし、難治性てんかんを始めとした各種難治性疾患の治療薬開発に繋げることである。令和元年度までに、(1) ケトン食の作用分子である「乳酸脱水素酵素」に関し、疾患モデルでの発現量解析を進めることで、本酵素を標的とする治療薬開発の妥当性を明らかにした。また、(2) ケトン食由来代謝産物による抗てんかん作用に関して、電位依存性カルシウムチャネルを中心に検討し、(3) ケトン食由来代謝産物のアルツハイマー病症状の制御に関しても明らかにした。さらに、(4) 新たな難治性てんかん制御機構として注目してきたアセチルコリンに関しても、その神経作用機構を明らかにした。上記を踏まえ、順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度において、ケトン食由来代謝産物であるケトン体の神経作用に関して、電位依存性カルシウムチャネルに注目して検討してきた。最終年度となる令和2年度は、その作用メカニズムをサブユニットレベルで電気生理学的・生化学的に検討するだけでなく、ケトン食由来代謝産物およびケトン食・ケトン体による各種難治性疾患制御に関して引き続き調べる予定である。
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