2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pathophysiological roles of convulsive neurological disease-causing gene PRRT2 in the synapse
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18H02720
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジスキネジア / PRRT2 / 大脳基底核 / シナプス / 痙攣 / ノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
Prrt2 KIマウスの脳内において各種シナプスタンパク量が主に大脳基底核で変動しているというデータは本研究の着想に至る重要な根拠であるが、その変動がセントラルドグマのどこで生じるかを明らかにすることはPRRT2の機能を解析する上で必要不可欠である。Prrt2 KIマウスの大脳基底核で減少した10種類のシナプスタンパクについてmRNAの発現変動をリアルタイムPCRで解析したところ、何れのmRNAにも変化は見られなかった。従って、これらのシナプスタンパク量の変動は、タンパクレベルでの相互作用の消失によるタンパク質の不安定化等に起因すると考えられた。 また、Prrt2 KIによる変動が顕著だったsyntaxin 1 (Stx1) 及びsynaptogyrin 3 (Syngr3) について、Prrt2との二重染色脳切片を超解像度顕微鏡で撮像し、大脳基底核におけるそれらの共局在性を解析したところ、Stx1、Syngr3ともにPrrt2との共局在が確認された。この結果は、Prrt2がStx1、Syngr3と大脳基底核で生理的に相互作用しうることを示唆しており、それらの分子との機能的協調性が推察される。 Syngr3は大脳基底核選択的に発現するドパミントランスポーター (DAT) の活性化に関わることから、上記の結果よりPRRT2がSyngr3と同様にDAT機能に影響を与えるかを調べた。DATを安定発現するNeuro2A細胞にPRRT2を一過性発現させ、蛍光ドパミン誘導体FFN102の細胞内取り込みを測定したところ、対照群のmockに比較してその取り込み量が有意に減少した。これは、PRRT2がDAT機能を抑制的に制御するという全く新しい知見であり、大脳基底核選択的なPRRT2機能を裏付けるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目1 (Prrt2 KI により大脳基底核で発現量が減少したシナプス分子に関して、大脳基底核におけるPRRT2との共局在性を免疫組織化学で調べる) に関して、Syngr3及びStx1がPrrt2と共局在することを免疫組織化学で示すことに成功した。同様の手法を用いて、残りのシナプス分子についても順次、解析を進めていく予定である。 項目2 (野生型およびPrrt2 KIマウスの大脳基底核プライマリーニューロンにおいて、FM dye、またはSypHluorinを用いて、シナプス小胞の放出やリサイクリングを解析する。) に関しては平成31年度までに行う項目であるが、現在、SypHluorinをCAGプロモーター下で発現するベクターの作製を完了し、マウス大脳基底核プライマリーニューロンにおいて発現することを確認した。 Prrt2 KIマウスの大脳基底核における各種シナプス分子の減少がタンパク発現に至るまでのどの段階で生じているかについては、研究を進める中で新たに解析の必要性が生じた内容であり、リアルタイムPCRで、いずれのmRNAもPrrt2 KIによる変動が確認されなかったことから、これらのシナプスタンパク量の変動は、タンパクレベルで生じていることが示された。 また、大脳基底核におけるPRRT2の機能を模索する中で、大脳基底核特異的に発現するドパミントランポーター (DAT) の活性がSyngr3によって調節されるという報告に着目し、PRRT2とDAT活性の関連を調べたところ、PRRT2がDAT機能を抑制的に制御することを見出した。 以上の理由により、本研究課題が概ね順調に進行していると判断し、(2) を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に沿って本研究課題を進める。 項目2:Prrt2 KIによって発現量が変動したタンパク質についてPRRT2との相互作用の解析を続ける。また、超遠心法により脳組織を細胞内分画し、Prrt2 KIによって、シナプス膜やシナプス小胞膜の何れでこれらのタンパク質の発現量が変化するかを明らかにする。 項目3:昨年度から準備を進めてきたSypHluorinやFM dyeを用いた実験系において、野生型及びPrrt2 KIマウスの大脳基底核プライマリーニューロンにおけるシナプス小胞の放出やリサイクリングを解析する。 項目4:野生型及びPrrt2 KIマウスの大脳基底核において、マイクロダイアリシスを行い、HPLCでGlu量、GABA量、ドパミン量を測定することで、グルタミン酸作動性神経とGABA作動性神経、ドパミン作動性神経を区別してシナプス放出を解析する。さらに、ドパミンと同時にHPLCで測定可能なセロトニンについても新たに解析対象に加える予定である。 項目5:電子顕微鏡を用いて、Prrt2 KIマウス大脳基底核(線条体、淡蒼球、視床下核、黒質)神経終末部位におけるシナプス小胞の数、サイズ及び局在の変化を野生型マウスと比較する。また、神経サブタイプ(グルタミン酸作動性、GABA作動性、ドパミン作動性神経等)の種類によって、Prrt2及びその相互作用タンパク質の発現量やシナプス機能への寄与度が異なることを想定し、それぞれのサブタイプマーカータンパク質を標識しながら、上記の解析を行う。この項目については当初、本学共同実験施設の中央電子顕微鏡室の設備を用いて進める予定であったが、シナプスを撮像するための技術的なサポートが必要であることから、科研費・新学術領域研究『学術研究支援基盤形成』生命科学4プラットフォームの研究支援を得て進めていく方針に変更した。
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Research Products
(5 results)