2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pathophysiological roles of convulsive neurological disease-causing gene PRRT2 in the synapse
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18H02720
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジスキネジア / PRRT2 / 大脳基底核 / ドパミン / ドパミントランスポーター / ノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核は小脳と並び不随意運動と関連が深い脳領域であるが、発作性運動誘発性ジスキネジア (PKD) の病態に関連する大脳基底核の役割は明らかになっていない。大脳基底核は黒質から線条体へ投射するドパミン作動性神経によって特徴づけられ、平成30年度には、ドパミントランスポーター (DAT) 安定発現Neuro2A細胞のドパミン再取り込み活性がPRRT2の一過性発現によって抑制されることを見出し、大脳基底核選択的なPRRT2の機能を示唆する知見を得た。令和元年度では、DATとPRRT2を共安定発現するNeuro2A細胞を樹立し、この細胞がDAT単独またはDATと変異型PRRT2の共安定発現細胞よりもドパミン再取り込み活性が低いことを示し、前年度のデータを補強することに成功した。 また、令和元年度では、野生型およびPrrt2 KIマウスの大脳基底核においてマイクロダイアリシスを行い、細胞外液中のドパミン量を測定し比較した。定常状態では両者の細胞外ドパミン量に差は見られなかったが、KClにより神経興奮を誘導した際の細胞外ドパミン量は、野生型に比べてPrrt2 KIマウスで約6倍の増加が見られた。この結果は、運動誘発的に起こるPKD発作の特徴と一致しており、PRRT2変異は神経活動時における大脳基底核内ドパミン量を過剰に増加させることでPKD発作を引き起こすと考えられた。 このように、PRRT2の機能として、培養細胞におけるDAT活性制御機能およびマウス大脳基底核における神経活動依存的な細胞外ドパミン濃度の調節機能が明らかになった。これらの結果はどちらも大脳基底核の神経伝達がPRRT2変異により障害されることでPKDを発症することを示唆する新しい知見であり、大脳基底核選択的なPRRT2機能を裏付けるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目2 (野生型およびPrrt2 KIマウスの大脳基底核プライマリーニューロンにおいて、FM dye、またはSypHluorinを用いて、シナプス小胞の放出やリサイクリングを解析する。) に関しては、SypHluorinをCAGプロモーター下で発現するベクターの作製を完了し、マウス大脳基底核プライマリーニューロンにおいて発現することを確認した。現在、SypHluorinが本ニューロンにおいてシナプス小胞のリサイクリングのインジケーターとして働くかを確認している。 項目3 (野生型およびPrrt2 KIマウスの大脳基底核において、マイクロダイアリシスを行い、HPLCでGlu量、GABA量、ドパミン量を測定することで、グルタミン酸作動性神経とGABA作動性神経、ドパミン作動性神経を区別してシナプス放出を解析する。) については、ドパミン量に関して、興奮刺激時に野生型よりもPrrt2 KIマウスで顕著に増加するという極めて重要で興味深いデータを得た。その他の神経伝達物質に関しても、令和2年度に順次測定していく予定である。 また、平成30年度にドパミントランスポーター (DAT) 安定発現Neuro2A細胞のドパミン再取り込み活性が一過性のPRRT2発現によって抑制されることを見出したが、令和元年度では、DATとPRRT2の共安定発現細胞において同様のデータを取得し、前年度のデータを補強することができた。 以上の理由により、本研究課題が概ね順調に進行していると判断し、(2) を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に沿って本研究課題を進める。 項目2:平成30年度から準備を進めてきたSypHluorinやFM dyeを用いた実験系において、野生型及びPrrt2 KIマウスの大脳基底核プライマリーニューロンにおけるシナプス小胞の放出やリサイクリングを解析する。 項目3:令和元年度にPrrt2変異によって大脳基底核における神経興奮時の細胞外ドパミン量が過剰になることを見出したが、今年度は、この変化がドパミンと放出と再取り込みのどちらに起因するかを明らかにするために、DAT阻害剤を添加した灌流液を用いてマイクロダイアリシスを行い、細胞外ドパミン量を測定することを計画している。また、シナプス小胞へのドパミンの再充填速度または小胞リサイクリングの速度を調べるために、連続的な興奮刺激を行う実験を現在進めている。今後は、グルタミン酸やGABAの細胞外濃度についても新たに解析対象に加え、Prrt2変異による影響を解析する予定である。 項目4:電子顕微鏡を用いて、Prrt2 KIマウス大脳基底核の神経終末部位におけるシナプス小胞の数、サイズ及び局在の変化を野生型マウスと比較する。また、神経サブタイプ(グルタミン酸作動性、GABA作動性、ドパミン作動性神経等)の種類によって、Prrt2及びその相互作用タンパク質の発現量やシナプス機能への寄与度が異なることを想定し、それぞれのサブタイプマーカータンパク質を標識しながら、上記の解析を行う。
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Research Products
(9 results)