2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of organelle crosstalk on organ homeostasis in aging and disease
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18H02727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (50232509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 陽亮 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10780736)
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
田中 哲洋 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90508079)
西 裕志 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90784174)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / ミトコンドリアストレス / 脂質代謝 / 脂質毒性 / ATF6 / オルガネラクロストーク / 尿細管間質線維化 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、オルガネラスロストークによる新しいエネルギー代謝制御機構の解明、それが臓器恒常性破綻に及ぼす影響を検討する。 本年度は、代謝老廃物の排泄臓器であり、エネルギー代謝が盛んでミトコンドリア代謝障害を起こしやすい腎臓に着目し、小胞体ーミトコンドリア間のオルガネラクロストークによる新たなエネルギー代謝経路の制御機構を分子レベルで解明し、それらの腎臓における病態生理学的意義を明らかにすることを試みた。 具体的に、糖尿病性腎臓病(DKD)等の疾患モデル動物の尿細管障害における代謝変動に関連する小胞体ストレス応答経路(unfolded protein response, UPR)分子の探索を目指し、メタボロームとトランスクリプトームの統合解析とパスウェイ解析を実施した。その結果、脂質代謝の変動が腎病態(腎機能、尿細管障害、間質線維化)、さらにいくつかのUPR分子群と相関していることが示唆された。 そこで、近位尿細管培養細胞株に上記候補UPR分子を高発現させて、細胞内脂質代謝の変動、つまりミトコンドリアの脂質代謝への影響を検討したところ、UPR転写因子ATF6の過剰活性化がミトコンドリアの脂肪酸代謝を有意に低下させる事を明らかにした。それによって細胞内に油滴が蓄積すると、尿細管細胞死や炎症・線維化関連分子群の発現亢進が起こることが示された。 一連の現象は、虚血再灌流線維化モデルマウスの腎臓の尿細管病変部においても確認され、その病態がATF6欠損マウスにおいて軽減することから、ATF6過剰活性化(小胞体ストレス)―ミトコンドリア代謝異常―尿細管間質障害という病態形成経路が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果から、尿細管において病的な小胞体ストレスはミトコンドリアの脂質代謝障害を惹起し、尿細管障害を起こすこと、つまり小胞体ーミトコンドリア間のURR経路を介したオルガネラクロストークの維持が尿細管恒常性維持に重要であることを明らかにすることが出来た。 本研究成果は国内外の学会で発表され、英文雑誌(国際腎臓学会 official Journal)に掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果に基づき、さらに腎障害によるミトコンドリア代謝変動に関連する小胞体ストレス応答経路(unfolded protein response, UPR)分子の探索、その病態生理学的意義の解明に着手する。特に、腎障害(糸球体・尿細管病変や腎機能低下)に相関して変動する糖・脂質・アミノ酸代謝経路を絞り込む。それによって、1)腎障害時の組織内エネルギー代謝の変動、2)前述の変動に関連するUPR分子の絞り込み、3)代謝性疾患関連腎臓病(糖尿病性腎臓病、脂質異常症)モデル動物の糸球体・尿細管における、上記候補UPR分子群とミトコンドリアエネルギー代謝の関連性、などを検討する。それら成果から、UPR経路によるミトコンドリア機能の制御機構(オルガネラクロストーク)とその破綻のメカニズムや病態生理学的意義の解明を目指す。 一方、腎臓は機能やエネルギー代謝特性が異なる様々な細胞から構成されてる。そこで今後は、形態、機能、脂質代謝効率などが異なる糸球体ポドサイトと尿細管上皮細胞にさらに焦点を絞り、それぞれの細胞においてミトコンドリア代謝関連UPR分子を高発現、あるいは欠損時のミトコンドリアエネルギー代謝変動や機能変化を検討し、腎臓細胞におけるオルガネラクロストークの細胞特異性を比較検討する。
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