2019 Fiscal Year Annual Research Report
アディポカイン制御因子の解明に基づく動脈硬化診断法の開発
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18H02731
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木原 進士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20332736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 浩靖 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00631201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 医療・福祉 / 分析科学 / 細胞・組織 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規アディポカイン制御因子(AKRF)を同定し、アディポネクチンやオメンチンとAKRFとの複合体による動脈硬化発症機序を明らかにすると共に、複合体測定による動脈硬化の診断法と、AKRFをターゲットとした治療法の開発につなげることを目的とする。
2019年度は、AKRFとして同定したケモカインCCL2の動脈硬化における意義を明らかにした。冠動脈疾患111症例において、冠動脈プラークの血管内腔に占める割合と血清CCL2濃度は有意な正の相関、血清アディポネクチン濃度は有意な負の相関を示した。そして、CCL2によるMAPキナーゼリン酸化を介した単球遊走能をアディポネクチンが結合することによって直接阻害するという新たな動脈硬化制御機構を明らかにした(論文投稿中)。
また、新たなAKRF としてアポリポ蛋白(APO)を同定した。Mycタグを付加したアディポネクチン(myc-APN)とFLAG タグを付加したAPO (FLAG-APO)を発現させたHEK293細胞溶解液を抗myc 抗体で免疫沈降するとFLAG-APOはmyc-APNに共沈し、抗FLAG抗体で免疫沈降するとmyc-APNがFLAG-APOに共沈することから、両者の特異的な結合を確認した。そして、肝細胞株におけるレムナント様脂質粒子の取り込みがAPO単独に比しAPN添加で増加することから、新たな動脈硬化機序解明につながると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、AKRFとして同定していた複数のケモカインの内、CCL2の動脈硬化における意義を明らかにした。冠動脈疾患111症例において冠動脈プラークの血管内腔に占める割合との関連を検討したところ、血清CCL2濃度とは有意な正の相関、血清アディポネクチン濃度とは有意な負の相関を示し、これらの分子がプラーク形成に拮抗的に作用することが示唆された。そして、CCL2による複数のMAPキナーゼのリン酸化を介した単球遊走促進作用をアディポネクチンが結合することによって阻害するという新たな動脈硬化制御機構を明らかにした(論文投稿中)。
しかし、アディポネクチン- Mac2 Binding Protein (M2BP)複合体を認識するモノクローナル抗体の作製がおくれている。昨年度に作製した抗体を検出抗体として構築したELISA系で免疫沈降とウエスタンブロットで半定量したアディポネクチン-M2BP複合体を検出できなかったことから、モノクローナル抗体がいずれも多量体に特異的な構造を認識していなかったと考えられ、引き続き作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、ヒト血清や培養細胞から免疫沈降と質量分析を用いたアディポカイン制御因子(AKRF)の同定を行う。並行してヒトゲノムデータベースを用いて同定したAKRFに共通するアミノ酸配列を含むcDNAの検索も行う。動脈硬化との関連が推定される分泌蛋白や受容体や機能が未知の分子を候補とし、候補分子のcDNAを用いて蛋白を発現させ、in vitroの系でアディポネクチンやオメンチンとの特異的な結合が確認されたものをAKRFとし、複合体測定系の開発と臨床意義の解明、動脈硬化モデルにおける機能解析を行う。冠動脈疾患で血中濃度が増加することを見出したアディポネクチン- M2BP複合体を定量的に測定するELISA系の構築も、引き続き行う。
昨年度にAKRFとして同定したアポリポ蛋白に関しては、肝臓における脂質代謝とマクロファージの泡沫化の両観点から検討を行う。アディポネクチンは肥満症で低下し、血清中性脂肪値と逆相関することは良く知られているが、肝臓における脂質代謝への関与は報告されていない。また、アディポネクチンやオメンチンは粥状動脈硬化の防御因子となることは良く知られているが、マクロファージの泡沫化への関与も十分には解明されていない。レムナントリポ蛋白モデルとして蛍光ラベルしたエマルジョンを作製し、肝細胞株やマクロファージ細胞株へのエマルジョン取り込みにおけるアディポカインとアポリポ蛋白との相互作用から、これらの機序を明らかにする。
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Research Products
(5 results)