2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト型自閉症モデルマウスによる発症メカニズムの解明と創薬開発への応用
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18H02747
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西山 正章 金沢大学, 医学系, 教授 (50423562)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロマチンリモデリング / 自閉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症は、コミュニケーション能力の質的障害および常同・反復的な興味・行動で特徴づけられる非常に発症頻度の高い発達障害であり、その発症メカニズムの解明と治療法の開発が強く求められている。近年、大規模な自閉症の原因遺伝子探索が行われ、クロマチンリモデリング因子CHD8が最も有力な原因遺伝子として同定された。われわれはヒト自閉症患者で報告されたCHD8変異を再現したヘテロ欠損マウスの行動解析を行ったところ、自閉症を特徴付ける行動異常である社会的行動の異常や不安様行動の増加が観察された [Katayama et al., Nature 537: 675-679 (2016)]。自閉症の発症にはニューロンやグリア細胞の機能異常が関与していると考えられるが、自閉症の行動異常の原因となる責任細胞種は明らかになっていない。CHD8ヘテロ欠損マウスの遺伝子発現解析では、オリゴデンドロサイト関連遺伝子の発現が最も顕著に低下していたことから、われわれはオリゴデンドロサイトにおけるCHD8の機能に着目した。CHD8へテロ欠損マウスはミエリン形成の低下やランビエ構造の異常、神経伝導速度の低下を示した。そこでオリゴデンドロサイト特異的CHD8ヘテロ欠損マウスを作製し行動解析を行ったところ、CHD8へテロ欠損マウスで観察された行動異常の一部が再現されることが判明した。さらに安静時機能的MRIによる解析によって、オリゴデンドロサイト特異的CHD8ヘテロ欠損マウスでは脳領域間の機能的結合性が変化しており、その変化は社会的行動と相関することが明らかになった。これらの結果から、CHD8変異によるオリゴデンドロサイトの機能異常が脳内の神経ネットワークに影響を与えており、自閉症発症の一因を担っている可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CHD8の欠損によりオリゴデンドロサイトの機能が障害することが判明したため、オリゴデンドロサイト特異的CHD8ヘテロ欠損マウスを作製し行動解析を行ったところ、自閉症様行動の一部が再現されることが判明した。さらに安静時機能的MRIによる解析では脳領域間の機能的結合性が変化しており、その変化は社会的行動と相関することが明らかになった。これらの知見は当初の研究目的に適っており、順調に達成されつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
オリゴデンドロサイト特異的にCHD8を発現誘導できるトランスジェニックマウスを作製し、自閉症モデルマウスと交配することによって、自閉症様の行動異常が改善されるかどうかを検討する。またCre-loxPシステムやウイルスベクターを用いて、CHD8へテロ欠損マウスにおいて異常がみられた脳領域、細胞種特異的に感光性タンパク質を発現させ、光刺激を行うことでCHD8へテロ欠損マウスの特定の神経活動を自由行動下に制御することによって、自閉症様の行動異常が改善されるかどうかを検討する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Oligodendrocyte dysfunction due to Chd8 mutation gives rise to behavioral deficits in mice.2020
Author(s)
Kawamura, A., Katayama, Y., *Nishiyama, M., Shoji, H., Tokuoka, K., Ueta, Y., Miyata, M., Isa, T., Miyakawa, T., Hayashi-Takagi, A., *Nakayama, K. I.
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Journal Title
Hum. Mol. Genet.
Volume: XX
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Skp2 contributes to cell cycle progression in trophoblast stem cells and to placental development.2020
Author(s)
Yamauchi, Y., Nita, A., Nishiyama, M., Muto, Y., Shimizu, H., Nakatsumi, H., Nakayama, K. I.
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Journal Title
Genes Cells
Volume: XX
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Disruption of FBXL5-mediated cellular iron homeostasis promotes liver carcinogenesis.2019
Author(s)
Muto, Y., Moroishi, T., Ichihara, K., *Nishiyama, M., Shimizu, H., Eguchi, H., Moriya, K., Koike, K., Mimori, K., Mori, M., Katayama, Y., *Nakayama, K. I.
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Journal Title
J. Exp. Med.
Volume: 216
Pages: 950-965
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] クロマチンリモデリング因子 CHD8の変異によるオリゴデンドロサイト機能異常と自閉症発症への関与2019
Author(s)
川村 敦生, 片山 雄太, 西山 正章, 昌子 浩孝, 阿部 欣史, 関 布美子, 高田 則雄, 田中 謙二, 徳岡 広太, 植田 禎史, 宮田 麻理子, 伊佐 正, 岡野 栄之, 宮川 剛, 林 朗子, 中山 敬一
Organizer
第42回日本分子生物学会年会
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