2020 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害の病態解明・治療法開発に資するPET分子イメージングプローブの開発
Project/Area Number |
18H02764
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 顕 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 准教授 (00566226)
小俣 直人 福井大学, 学術研究院医学系部門, 客員教授 (30334832)
徳永 雄次 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (80250801)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PET / 発達障害 / 分子イメージング / ノルエピネフリン・トランスポータ / オキシトシン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害の子どもは、学校・社会生活において困難を抱えており、親や支援者を含め社会全体で解決する必要がある。しかし、発達障害の原因は未だ明らかとなっておらず、有効な治療法がないのが現状である。その中でも特に注意欠陥・多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)の病態解明や新規治療法の開発が社会的に求められている。そこで、この社会的要請に応えるためにはPET分子イメージング法が有効であると考え、「ADHDやASDの病態解明や新規治療法の開発に最適なプローブは何か」という学術的な問いを設定し、これを解明するための計画を策定した。具体的には、それぞれの障害との関連が報告されているノルエピネフリントランスポータ(NET)とオキシトシン受容体(OXTR)をイメージングするプローブを合成し、その有効性について評価し、最適なプローブを開発することを目的とする。 本年度は昨年度から引き続き新しく設計したNETプローブにF-18の導入を試みたが、F-18の導入位置がフッ素を導入しにくい位置であり、導入できなかった。次年度には、新しくホウ素を導入した前駆体を作成するなど、さらに新しいF-18導入方法の検討を行い、放射性プローブとしての性質を検討する予定である。 昨年度、OXTRプローブのOXTRへの親和性を測定するためにOXTRと3種類のバソプレッシン受容体をそれぞれ安定的に発現する細胞株の作製が完了したが、親和性の検討を行ったところ、作製した細胞内で受容体がリガンドに結合できる状態に無いことが明らかになった。現在、設計を見直して新たな安定発現細胞株の作製を行っている。次年度にこの安定細胞株を作製した後に、合成した化合物の親和性と選択性を確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NETプローブに関しては、F-18の導入位置がフッ素を導入しにくい位置であり、その導入方法の探索に時間がかかっている。 OXTRプローブに関しては、OXTRと3種類のバソプレッシン受容体を安定的に発現する細胞株の作製が完了したが、リガンドが結合できる状態にないことが判明した。現在、新たな設計で安定発現細胞株の作製を行いつつ、候補物質の設計合成も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
NETプローブに関しては、これまでにnisoxetineおよびreboxetine骨格の化合物におけるNET結合に重要な部位を見いだしてきた。戦略1:NETとの結合に重要な部位に、F-18を直接導入あるいは生体内脱フッ素反応に強い官能基を導入する、戦略2:NETとの結合に関連しない脱フッ素反応を受けにくい部位にF-18を導入するという2つの戦略により、候補プローブを合成する。戦略1に関してはF-18の導入が難しい部位であるため、新しいF-18の導入方法の検討を最優先で進める。戦略2についても設計合成を行っていく。 OXTRイメージングプローブに関しては、最適な母体化合物が存在せず、導入する最適な放射性核種も決定していないのが現状である。そこで放射性核種としてはC-11、F-18、Br-76などのPET核種を導入した候補プローブを設計、合成する。C-11標識プローブに関しては、最近報告されたOXTRに結合する数種類の化合物を母体化合物とし、その構造を変化させずにC-11を導入したプローブを設計・合成したので、これらのプローブは標識法を確立後、in vivo評価を行い、その有効性を確認する。F-18、Br-76プローブに関しては、C-11プローブと同じ母体化合物にこれらの核種を導入したプローブを設計・合成を行ったので、続くin vitro評価によりOXTRに対する高親和性化合物を探索する戦略をとることとする。OXTRのin vitro評価のための適切なassay系の構築を再度行っており、細胞が作製が終了したら候補化合物の親和性評価を最優先で進め候補化合物を絞り込む。絞り込み後は、候補プローブの脂溶性や安定性などの物理化学的な性質から、NETおよびOXTRに対する親和性および選択性を検討することにより、候補プローブの基礎的な性質を評価する。
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