2019 Fiscal Year Annual Research Report
難治性がんに対する放射線と免疫チェックポイント阻害剤併用による新規治療法の開発
Project/Area Number |
18H02767
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 和彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40253984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 雄二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00302000)
高橋 豊 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (40353461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 免疫治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療は効果的な局所がん治療であり、がんの種類によっては根治が期待できる。その反面、局所再発、転移等により依然として治療効果が限定的な難治性がんも存在する。免疫チェックポイント阻害剤は、局所のみならず遠隔転移を有する症例に対しても画期的な効果を上げることができる新しいがん治療法として期待されている。本研究では、難治性がんに対する放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤の併用治療による局所及び遠隔における治療効果を検討し、治療効果増強が認められる場合における分子生物学的メカニズムの解明と、併用療法における効果的なシーケンスによる新規治療法を開発することを目的とする。さらに、放射線治療、化学療法抵抗性の根源となっているがん幹細胞に対しても同様の検討を行い、より効果的な治療法の開発を目指す。 具体的には、局所再発や遠隔転移により放射線治療の効果が限定的である骨肉腫、子宮腺がん、膵臓がん、非扁平上皮頭頚部がんなどの難治性がんおよび放射線治療や化学療法の抵抗性の原因となっているがん幹細胞を対象として、放射線(X線および炭素線)と免疫チェックポイント阻害剤と併用することにより、局所制御の向上と遠隔転移制御が可能であるかどうかを検討する。また、効果的な薬剤の選択指標を与え、これらの薬剤および放射線との効果的なシーケンスを解明する。本研究が成功すれば、従来局所治療として位置づけられてきた放射線治療を、がんの遠隔転移をも制御できる革新的治療へと発展させることが大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までにおいて、骨肉腫のマウスモデルで無治療群、薬剤単独群、放射線(X線)単独群、薬剤+放射線併用群を比較することにより、併用群における治療効果を明らかにする研究を施行した。具体的には、難治性がんに対して、放射線(X線または炭素線)とPD-L1単剤、あるい はCTLA-4抗体単剤との併用で局所および遠隔転移に対する治療効果を解明し、その影響となっている免疫担当細胞(CD8+T細胞、 Treg、骨髄由来制御細胞等)の解析をflow cytometryでの解析を行った。今回の検討により、X線とPD-L1抗体及びCTLA-4抗体の併用により骨肉腫に対して著明な抗腫瘍効果が得られることを明らかにすることができた (Takahashi Y, Seo Y, Ogawa K et al. Plos One, 2018)。さらに、炭素線とPD-L1抗体及びCTLA-4抗体の併用により骨肉腫に対して著明な抗腫瘍効果が得られることを明らかにすることもできた (Takahashi Y, Seo Y, Ogawa K, et al. Oncotarget, 2019)。また、膵がんマウスモデルに対して、X線とPD-L1抗体及びCTLA-4抗体の併用により骨肉腫に対して著明な抗腫瘍効果が得られることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、前年度と同様に、 骨肉腫、膵がんマウスモデルで無治療群、薬剤単独群、放射線(X線)単独群、薬剤+放射線併用群を比較することにより、併用群における治療効果を明らかにする研究を行う。具体的には、難治性がんに対して、放射線(X線または炭素線)とPD-L1単剤、あるい はCTLA-4抗体単剤との併用で局所および遠隔転移に対する治療効果を解明し、その影響となっている免疫担当細胞(CD8+T細胞、 Treg、骨髄由来制御細胞等)の解析をflow cytometryで解析する。そして、高い奏効率が得られる抗体と放射線の治療シーケン スを解明する。また、免疫チェックポイント分子は、抗腫瘍効果を低下させる因子である一方で、その抗体を用いることで高い 奏功率が得られることが報告されているので、in vitroで放射線により誘発される免疫チェックポイント分子の抗体の使用も検 討する。 さらに、上述の系で炭素線による実験を行い、治療効果の分子生物学的メカニズムの解明を行う。また、申請者らが独自に開発したがん幹細胞の単離手法を用いて樹立した上述のがん幹細胞をマウスに移植し、前年度と同様の検討を行い、がん幹細胞を標的とした治療法の開発を目指す。
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