2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on regulation of lymphocyte development by IKZF family proteins and on molecular pathogenesis of disorders caused by a mutation in IKZF family molecules.
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18H02778
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30239628)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Ikarosファミリー分子 / 原発性免疫不全症 / リンパ球分化 / 転写調節 / 腫瘍発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
IKZF3変異患者での解析結果を下にして、モデル細胞・動物を用いた病態解析から、IKZFファミリー分子の生理学的役割に踏み込んだ研究を行うことを目標としている。 本年度は今までのIKZF3 G158R変異患者のモデルマウスであるIKZF3 G159R ノックイン(KI)マウスを用いたB細胞分化異常発症機構を中心とした研究を進めた。IKZF3変異によりホモダイマーとしての機能が低下することに加えて、ヘテロダイマーパートナーであるIKZF1に対して阻害を示すことを、ChiP-Seq, RNASeqを用いて明らかにしたが、同変異を導入したモデル細胞としたNALM6(preB細胞株)を用いて、核内挙動やヘテロクロマチン形成、転写調節異常の詳細をさらに細かく検討した。また今まで不成功であったIKZF1, IKZF3の共発現によるEMSAやルシフェラーゼアッセイの系が確立し、IKZF3がIKZF1の転写を阻害することを明らかにした。また新たに骨髄競合アッセイを行い、IKZF3 KIマウスでは、主としてB細胞分化に異常を認めることを明らかにした。胸腺細胞を用いたT細胞分化制御異常解析も反復し、成果をあげた。上記については論文として投稿した(再投稿準備中)。 IKZF1-N159S KIモデルマウスについては、N159Sの機能が優性阻害に加えて、ネオモルフ変異である可能性を示唆する所見が得られ、来年度以降の課題になる、新規IKZF3変異(IKZF1 N159Sと同じ表現型)とあわせて、研究を進めることした。新たな知見が加わることによって、研究の幅が広がっている。iPS細胞については、前年度に引き続き、高精度高効率なSNGD法によりKIが可能であることを確認し、またIKZF3変異導入用のコンストラクトを準備した。iPS細胞からのB細胞分化系が確立した際に、迅速に検討を開始できる準備が整っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル細胞及びモデル動物を用いて、当初に予定していたRNASeq, ChIPSeqや局在解析が進むと共に、転写調節の詳細な解析がレポーター遺伝子解析で可能になった。IKZF3変異を基軸にして、IKZF3ホモダイマー、IKZF1/3ヘテロダイマーの機能を解析することにより、正常及び異常における、IKZF1ホモダイマー、IKZF3ホモダイマー、IKZF1/3ヘテロダイマーの機能の棲み分けが明らかになりつつある。例えば、IKZF1/IKZF3はIKZF1が転写を制御するとされている全ての領域ではなく、一部にのみ影響が及ぼされることはChiP-Seqとレポーター遺伝子アッセイから明らかになり、さらなる詳細なマッピングを進めているところである。またIKZF1/IKZF3ヘテロダイマー異常により、どの細胞系列に主たる影響を及ぼすかも、骨髄競合アッセイを実施することによって明らかになった。 これらの研究から、IKZF3のIKZF1への影響が確立し、heteomeric阻害という新しい概念の提唱、及び論文の投稿に結びついている。また当該IKZF3変異の情報からIKZF2変異の挙動や、IKZF1, 2, 3の相互関係についても解析が徐々に進展している。 当初の研究計画調書に記載し、現在予想と異なった展開となっているのが、悪性リンパ腫発症である。変異マウスは、単独変異、ダブル変異、長期飼育などを試みているが、リンパ腫発症がなく、おそらくEBV感染症やその他のtriggerが必要と考えている。一方、腸炎等の附随所見があり、自己免疫・自己炎症への展開を考えている。iPS細胞については、検討を開始する準備が整っており、あとは技術的な課題の進展を待っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにIKZF1ホモダイマー、IKZF3ホモダイマー、IKZF1/3ヘテロダイマーによるB, T細胞分化制御の精緻なマッピングを継続する。特に、新しく導入可能となったルシフェラーゼアッセイを用いB/T細胞分化に重要な特異的な遺伝子発現に対する影響を検討する。IKZF1, IKZF3とIKZF2, IKZF4との相互作用、及びヘテロダイマーによる機能については、モデル細胞(NALM6及びHPB-ALL)を用いて情報を収集する。 IKZF3変異マウスモデルは、炎症性腸疾患様の症状を呈することから、悪性リンパ腫モデルより、炎症性腸疾患モデルに、視点を移して解析する。末梢血及び腸管内浸潤単核球を用いて詳細な免疫細胞亜群解析と病理組織解析を行い、T細胞レパートア解析を行う。悪性リンパ腫の再現のための、遺伝的不安定性あるいはドライバー変異を有するマウスとの交叉については今後の課題として計画の策定にとどめたい。 新基軸として、IKZF3新規変異情報(T細胞異常が主体)より、IKZF1, IKZF3のネオモルフ変異について検討を進めたい。検討によりIKZFファミリー分子全体のB細胞、T細胞分化、分化に関与する分子に対する転写調節について、さらに理解を深めたい。2021年度はモデル細胞を作成し、RNAseqやChIPseqによる検討を進める予定である。 iPS細胞を用いた検討は、T細胞分化の解析に有用な可能性があり、新規変異変異を導入したiPS細胞株を作成し、T細胞分化系の検討に入る予定である。 概ね、本年度中に実施できる研究と、発展する研究がソートアウトできる状況になっている。最終年度に当たり現在再投稿準備中の研究は完了させ成果として提示したい。詳細マッピングやネオモルフ変異検討、自己免疫・炎症の検討から、今後、IKZFファミリー分子の機能について大きくかつ精緻な図を描くべく研究を推進したい。
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Remarks |
NIH Department of Laboratory Medicine、Dr. Sergio Rosenzweig及びDr. Hye Sung Kuehnと、IKZF3新規変異および、そのほかのIKZFファミリー異常について、共同研究及び情報交換を開始した。
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