2019 Fiscal Year Annual Research Report
患者神経幹・前駆細胞由来ミニブレインによる脳形成異常の病態解明と治療分子標的探索
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18H02781
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80243301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 崇宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10446114)
伏木 信次 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80150572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胎児医学 / 脳形成異常 / 神経幹・前駆細胞 / 脳オルガノイド / 一次繊毛 / 繊毛病 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 神経幹・前駆細胞(NSPCs)の一次繊毛の制御機構 恒常活性化型変異FGFR3(K650E, R248C)、正常FGFR3を安定発現させた不死化NSPCsを用いて、未分化・分化誘導下の二次元培養で、免疫染色、レーザ顕微鏡観察により一次繊毛の発現頻度、形成異常を解析した。FGFR3(K650E)を安定発現させたNSPCsでは、正常FGFR3を安定発現させたNSPCsに比して、優位に一次繊毛の出現率が低下し、一次繊毛長の短縮がみられた。FGFR3(R248C)を安定発現したNSPCsでは、一次繊毛長が短縮傾向を示したが有意差はなかった。これらの結果は、変異型FGFR3(K650E)がNSPCsの一次繊毛に異常を引き起こすこと、TDの脳形成異常の病態に、一次繊毛の異常によるNSPCsの制御異常(Ciliopathy)が関与する可能性を示唆する。網羅的リン酸化解析による変異型FGFR3(K650E, R248C)が引き起こす病的なリン酸化シグナルカスケードの同定を行い、一次繊毛形成異常と脳形成異常の関連を検討する。 2. 白血病阻害因子(LIF)によるNSPCsの一次繊毛の制御 白血病阻害因子(LIF)はインターロイキン6ファミリーに属するサイトカインで発生、炎症などの様々な場面で作用し、特に神経系では神経幹細胞の分化・増殖を制御することが知られている。我々はヒトNSPCsにLIFを作用させた際に、一次繊毛の優位な短縮が誘導されることを発見した。今後、各種阻害剤を用いた検討で、LIFの誘導する既知のシグナルカスケードのうち繊毛の形態変化に関する経路を同定し、繊毛依存的なシグナル伝達経路の変動によって惹起される脳形成異常の発生メカニズム解明に繋げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳形成異常責任遺伝子を導入したヒトNSPCs亜株群を樹立し、三次元培養系で脳オルガノイドを構築し、遺伝子型と表現型の関連を細胞レベル・分子レベルで検討し、表現型の基盤となる分子機序・シグナル伝達経路を顕在化させる研究を続行してきた。しかし、脳オルガノイドを構築する細胞の多様性には、ヒト発生途上の胎児脳のそれとは隔たりがあり、in vitroヒト脳モデルとして限界があった。そこで、脳形成異常責任遺伝子を導入したヒトNSPCsを用いた二次元培養モデルで、一次繊毛に着目したNSPCsの制御異常(Ciliopathy)と脳形成異常の関連を明らかにする研究を開始した。現在、有意義な実験結果が出てきており、今後、分子変動、形態異常を惹起するグナル伝達経路を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 網羅的リン酸化解析:恒常活性化型変異FGFR3(K650E, R248C)を安定発現させた不死化NSPCsを用いて、変異型FGFR3が引き起こす病的なリン酸化シグナルカスケードの同定を行う。 2. 一次繊毛の形態変化時におけるShh経路の変動についての解析 ①恒常活性型 FGFR3(K650E変異)を安定発現させたNSPCs ②LIFを作用させたNSPCsにおいてShh経路の活性化状態を以下の方法で比較する。 (1)-1. Shh経路に特異的な転写産物として知られるShh、PTCH1のmRNA発現量を定量PCRで測定する。(1)-2.伝達経路のtransducerとして知られるSMO、Gli1、Gli3タンパクの発現量と細胞内局在の変動をそれぞれウェスタンブロットと蛍光免疫染色により観察する。 (1)-3. Shh経路を活性化させる化学製剤であるSAGと阻害剤であるcyclopamineを投与した際の反応性を検討する。(1)-4. Shh経路の下流に位置し、神経幹細胞の動態に影響する種遺伝子発現を定量PCRで確認し、NSPCsの分化・増殖とShh経路の関係を検討する。(1)-5. (1)-4で発現変動を示した遺伝子に関して、siRNAを用いた阻害実験を行い検証する。
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