2020 Fiscal Year Annual Research Report
アレキサンダー病新規モデルマウスを用いて明らかにするアストロサイトの役割
Project/Area Number |
18H02785
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
近藤 洋一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40284062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元野 誠 大阪医科大学, 医学部, 助教 (30619622)
濱岡 仁美 (黒瀬仁美) 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80545608)
井上 順治 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20814859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレキサンダー病 / アストロサイト / 疾患特異的iPS細胞 / グリア前駆細胞 / ヒトグリア細胞キメラマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイトの中間径フィラメントGFAPの遺伝子変異によって起こる致死的な白質ジストロフィー、アレキサンダー病には現在のところ忠実な動物モデルが存在しない。マウスなど他の動物種ではなく、ヒトのアストロサイトを用いなければ病態の再現はできないとの仮説のもと、本研究ではアレキサンダー病患者由来のiPS細胞からアストロサイトを誘導し免疫不全マウス脳内に移植することで、アレキサンダー病モデルマウスを確立することを目指す。細胞はアレキサンダー病患者由来のiPS細胞株であるA195とA266、および正常対照iPS細胞株N1を用いた。さらに同じ遺伝的バックグラウンドをもつ対照株を得るために、遺伝子編集の手法を用いてA266株のGFAP遺伝子変異部分を正常化した細胞株も作製した(A266N株)。 A266株またはN1細胞株由来のグリア前駆細胞を免疫不全Rag2ノックアウトマウスへ移植し、6ヶ月経過したところで脳組織を免疫組織化学的に観察した。いずれの細胞株でも大脳白質や脳室周囲にヒト由来のアストロサイトが生着していた。その突起についてはA266株のほうが細い印象があり、またより縮れた形態を示していた。ただし、アレキサンダー病に特徴的なGFAP陽性物質であるローゼンタール線維は細胞内に認められなかった。マウスにとって生後6ヶ月は長い期間であるが、ヒト細胞の発生・発達の時間軸で考えるとローゼンタール線維を生じるには更に時間がかかるのかもしれない。まだサンプル数が少ないため、現在、細胞移植の例数を増やして統計的に検討する準備を行っている。またN1細胞株の代わりにA266株を正常対照群として用いて細胞移植実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度、前々年度に、免疫不全マウスの系統を変更したことや、動物実験施設で発生した日和見感染などの影響を受けて、特にin vivoの実験が遅れていたため、本年度は細胞移植によるヒトグリア細胞キメラマウスの作製に注力してきた。しかし移植後6カ月でも患者由来アストロサイト内に病理学的特徴であるローゼンタール線維を生じないため、さらに長い時間の観察を余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
アレキサンダー病患者由来ヒトグリア細胞キメラマウスが得られるようになって、in vitroでは得られない本来の形態をもった患者由来アストロサイトの観察が可能になった。しかし生後6カ月を経てもアレキサンダー病に特徴的な細胞内GFAP陽性物質であるローゼンタール線維が確認されない問題に現在あたっている。対策として、まずはヒトグリア細胞の成長の遅さを考慮してさらに長期間観察する予定である。しかしそれでもローゼンタール線維を生じない場合、アレキサンダー病の発症機序は単純ではない、すなわちGFAP遺伝子変異単独では起こらない可能性を考える必要がある。実際、単一のGFAP遺伝子変異から生じるアレキサンダー病の病像は患者によって大きく異なることからも、複合要因を考えることは重要であろうと考える。アレキサンダー病患者由来アストロサイトの培養は確立しているので、これに薬剤スクリーニングのアイデアを応用し、ローゼンタール線維を生じせしめる薬剤を見つけることで、発症のための複合要因を明らかにすることを考えている。
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