2018 Fiscal Year Annual Research Report
NASH・肥満関連肝癌の特異的代謝変化に基づく基礎的病態解明から前臨床試験まで
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18H02789
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (00555609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 非アルコール性脂肪肝炎 / metabolic reprogramming |
Outline of Annual Research Achievements |
1.アシルカルニチンのバイオマーカーとしての可能性を追求するため、生検でNAFLD/NASHと診断された241症例の血清を用いて、LC-MS/MSによって不飽和を含むAC0~18の16種類のアシルカルニチン濃度を測定し、病態との関連を詳細に検討した。すると肝線維化進行とともに長鎖不飽和アシルカルニチンが増加する傾向にあり、NAFLD→NASH→LC→HCCと変化するにつれてAC14:1high/AC18:1high/AC5:0lowという特徴的シグニチャーを示す割合が有意に増加することがわかった。さらに長鎖不飽和アシルカルニチンは血清炎症性サイトカイン濃度とも正の相関を示すことがわかった。またアシルカルニチン増加とミトコンドリアβ酸化能低下の両者を反映する指標(AC16:0+AC18:1)/AC2:0は、肝線維化とは独立した有意な肝癌関連因子であり、マウスの実験結果を裏付ける結果となった。 2.ビタミンD誘導体について、絶食後再摂食による脂質生合成誘導モデルを用いてin vivoでSREBP阻害作用を有する化合物を数種類同定した。 3.一方、SREBP活性化を伴ってNASHから肝細胞癌を発症する肝臓特異的PTEN欠損マウスに、SREBP活性化に必須の分子SCAPを欠損させ(PTEN/SCAP DKOマウス)、肝臓特異的PTEN欠損SREBP不活性化マウスを作成したところ、むしろ肝臓の病態が悪化することがわかった。 4.NASH進展・発癌におけるASK1の役割について、全身ASK1欠損マウス、肝臓特異的ASK1欠損マウス、骨髄細胞特異的ASK1欠損マウスを作成し、それぞれについてNASH肝癌マウスモデルを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アシルカルニチンのNASHバイオマーカーとしての可能性について、さらに検討を進める価値があると考えられる結果が得られた。またビタミンD誘導体についても有望な化合物が複数個同定された。さらにマウスの実験計画についても、当初の予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.アシルカルニチンのバイオマーカーとしての有用性や病態における役割についてさらに解析をすすめる。 2.ビタミンD誘導体については、化合物の絞りこみを行うと同時に、至適投与量・投与経路を決定し、ob/obマウスを用いて脂肪肝における有用性を検証する。そこで有望な結果が得られた化合物については、発癌モデルを用いて発癌抑止効果を検討する。 3.PTEN欠損マウスで脂質生合成を阻害するとむしろ病態が悪化するメカニズムについて、メタボローム解析やトランスクリプトーム解析を行い、さらに検討をすすめる。またこれがNASHにおいてuniversalな現象であることを確認するため、ほかの食餌性NASHモデルでもSCAPを欠損させ、その影響を検討する。 4.NASH肝癌におけるASK1阻害の影響については、各種ASK1欠損マウスのフェノタイプを今年度中に確認する。
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Research Products
(5 results)