2019 Fiscal Year Annual Research Report
肝線維化治療の標的分子同定にむけたヒトiPS細胞由来肝組織様オルガノイドの開発
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18H02790
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30372444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (10175127)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 疾患モデル / 肝線維化 / 胆管細胞 / 肝星細胞 / 肝幹/前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、1. ゲノム編集により標的遺伝子を改変したヒトiPS細胞から肝前駆細胞を分化誘導し、病態を再現しうる新たな肝疾患病態解析モデルを構築すること、2. ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法を確立し、標的遺伝子の修飾により肝星細胞としての誘導効率化を目指すこと、3. ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞と同・間葉系細胞との新規共培養系確立により、肝組織を一部模倣しうる培養体<iPS-derived Liver Organoid>を作成し、治療標的分子を抽出すること、の3点を目的とした研究を行い、今年度の成果として下記を得た。 先天性肝線維症の疾患モデルとして、ゲノム編集により疾患型ヒトiPS細胞を作成し、これを胆管細胞に誘導して解析した。その結果、IL-8とCTGFが本疾患の病態形成に重要な分子であることが示され、本疾患の患者肝臓検体でも同様の結果が得られたことから、これらは治療標的分子の有力候補となることが示された(JDDW 2019、会長賞受賞講演で発表)。 次に、胆管形成の調節において、肝前駆細胞とその微小環境、特に肝間葉系細胞との細胞間相互作用が重要と考えられるが、本研究では肝間葉系細胞から分泌される液性因子としてVasoactive intestinal peptide(VIP)の重要性に着目した。ヒトiPS由来胆管細胞ではVIP受容体(VIPR)の発現を認め、iPS由来胆管細胞の管腔形成はVIPの添加によって有意に促進された。VIPRをknock downするとVIPによる管腔形成の促進効果は阻害された。VIPによる胆管管腔形成促進機構を解析したところ、胆管細胞におけるtight junctionの形成促進によることが示された(Hepatol Commun, 2020)。これらの結果を基盤に次年度も研究計画を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最初に、「ゲノム編集により標的遺伝子を改変したヒトiPS細胞から肝前駆細胞を分化誘導し、病態を再現しうる新たな肝疾患病態解析モデルを構築する」研究に関しては、極めて順調に進行させることができた。先天性肝線維症モデルとしてのヒトiPS細胞の研究結果は、胆管細胞が産生するIL-8とCTGFが、先天性肝線維症でみられる胆管形成の異常と進行性の肝線維化の双方に重要な役割を果たすことが解明された。この病気は小児期に肝移植が必要となることもある難治性かつ進行性の病気であり、新規治療法の開発にむけた病態解明が急務とされていた。本研究で解明したIL-8とCTGFを抑制する治療を開発することが、先天性肝線維症の治療に有用である可能性を示しており、現在は肝移植以外には治療法がない難治性肝疾患の治療開発への応用が期待される結果だった。本研究の成果は、国際的な評価が高い欧州肝臓学会機関誌 Journal of Hepatology(Impact Factor 18.946)に採択され、本研究に基づく発表で、研究代表者は日本肝臓学会大会会長賞を受賞した。 次に、「ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法を確立し、標的遺伝子の修飾により肝星細胞としての誘導効率化を目指す」研究に関しても極めて順調に進行させることができた。我々が着目したVasoactive intestinal peptide(VIP)は神経伝達物質の1つとして有名である一方で、肝間葉系細胞が分泌することは知られていなかった。そしてその機能を分子生物学的に解明した結果、胆汁うっ滞性肝疾患の病態形成にも関与することが示された。本研究の成果は、同様に国際的な評価が高い米国肝臓病学会機関誌 Hepatology Communicationsに採択された。以上の成果が示すように当初の計画以上に研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、予定通り 1. ゲノム編集により標的遺伝子を改変したヒトiPS細胞から肝前駆細胞を分化誘導し、病態を再現しうる新たな肝疾患病態解析モデルを構築する、2. ヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞(星細胞)の分化誘導法を確立し、標的遺伝子の修飾により肝星細胞としての誘導効率化を目指す、の両項目に関して、さらなる研究の発展を図ってゆく。今後は、これまでに示した分子以外にも研究の対象を広げることで、新たな学術的知見を得るとともに、創薬対象となる分子のスクリーニングも進めてゆく予定である。 並行して、「3. ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞と同・間葉系細胞との新規共培養系確立により、肝組織を一部模倣しうる培養体<iPS-derived Liver Organoid>を作成し、治療標的分子を抽出する」に関しても、さらに研究を進めてゆく。ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞あるいは成熟肝細胞とヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞を共培養し、肝組織を模倣しうる培養体の構築を進めている。平面培養系で新たな細胞種を用いること、全てiPS由来細胞を用いること、足場となる細胞外マトリックスには新規技術を導入した培養系を用いることでbreakthroughを試みている。最近の進捗として、ヒトiPS細胞から作成した肝細胞系譜細胞を利用したHepatocyte Organoidを作成しており、今後の細胞間相互作用の解析に応用できる見込みである。作成した<iPS-derived Liver Organoid>の機能判定として,当初はin vitroでのアルブミン合成能や尿素合成能などを指標として機能評価を進め、その後にマウスへの移植系でも評価を進めてゆく予定である。
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[Journal Article] Vasoactive Intestinal Peptide Derived From Liver Mesenchymal Cells Mediates Tight Junction Assembly in Mouse Intrahepatic Bile Ducts2020
Author(s)
Sato A, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Tsunoda T, Kaneko S, Tsuchiya J, Shimizu T, Takeichi E, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Koshikawa N, Seiki S, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M.
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Journal Title
Hepatology Communications
Volume: 4
Pages: 235~254
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Loss of fibrocystin promotes interleukin-8-dependent proliferation and CTGF production of biliary epithelium2019
Author(s)
Tsunoda T, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Kaneko S, Sato A, Tsuchiya J, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Sogo T, Komatsu H, Mukouchi R, Inui A, Fujisawa T, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M
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Journal Title
Journal of Hepatology
Volume: 71
Pages: 143~152
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Comprehensive genetic analysis of cholangiolocellular carcinoma with a coexistent hepatocellular carcinoma‐like area and metachronous hepatocellular carcinoma2019
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Kaneko S, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Tsunoda T, Inoue-Shinomiya E, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Tanabe M, Sugawara E, Takemoto A, Ojima H, Sakamoto M, Muraoka M, Takano S, Maekawa S, Enomoto N and Watanabe M.
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Journal Title
Hepatology Research
Volume: 49
Pages: 1466~1474
DOI
Peer Reviewed
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