2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of familial aortic dissection by smooth muscle myosin mutation and elucidation of vascular aging mechanism
Project/Area Number |
18H02811
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
永井 良三 自治医科大学, 医学部, 学長 (60207975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
仲矢 丈雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (80512277)
宮川 拓也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50596559)
田之倉 優 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (60136786)
今井 靖 自治医科大学, 医学部, 教授 (20359631)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 平滑筋ミオシン / 家族性大動脈解離 / 血管老化機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性大動脈解離は致死性疾患だが、その病態機序には不明の点が多い。我々は平滑筋ミオシン遺伝子Myh11の新規変異(Exon29 del 1263K)による遺伝性大動脈解離の家系を同定した。この変異は平滑筋ミオシン重鎖尾部の4連続リジン残基が3連続に変化しており(4K→3K)、成長と共に大動脈平滑筋が収縮型形質から合成型に転換する。これは血管の早期老化である。しかし平滑筋ミオシン変異による血管老化と大動脈解離の分子機構は解明されていない。 本研究では、我々が開発した平滑筋ミオシン変異(Exon29 del 1256K)マウスを用いて、平滑筋ミオシン変異の果たす役割を動脈、膀胱、子宮等種々の臓器で解析した。その結果、エラスチン遺伝子の発現や細胞接着に関わるFAKの低下が明らかとなった。今後、平滑筋ミオシン変異による細胞形質転換及び大動脈解離の分子機構を、平滑筋形質転換因子であるKLF5、Wnt/βカテニンシグナル、SASP因子(細胞老化関連分泌現象)、ATM等から解析する。 平滑筋ミオシン変異蛋白の分子構造解析は順調に進行している。構造学的には、Myh11のK1256はライトメロミオシン(LMM)のN末端側に位置し、in silico分子モデリングの解析から、K1256の欠損によりLMMのコイルドコイル形成が乱れることが示唆された。この仮説を検証するため、LMMフラグメントの結晶化で実績のある3種類のタンパク質をそれぞれ融合したMyh11のLMMフラグメントをデザインし、各種の精製タンパク質を調製して結晶化スクリーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は計画通りに進展した。平滑筋ミオシン遺伝子Myh11の新規変異(Exon29 del 1263K)を改良CRISPR-Cas9系を用いてC57BL/6マウスに導入した。この変異マウスと野生型マウスの表現型を比較検討した。組織学的にはホモ接合型(Myh11ΔK/ΔK)において大動脈は中膜と外膜の壁厚の増加を示した。電子顕微鏡で平滑筋細胞の変性、エラスチンの重層、および細胞接着を観察した。血管壁で発現するRNAの定量的解析、エラスチンおよびフォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)の発現は、Myh11ΔK/ΔKマウス大動脈において減弱していた。マグヌス装置を用いた大動脈リング標本による大動脈の収縮・弛緩機能検査ではフェニレフリンによるMyh11ΔK/ΔKマウス大動脈の等尺性張力は、野生型マウスと比較して有意に減少していた。また、各遺伝子型のマウスで大動脈負荷刺激(アンギオテンシンII)を行い、大動脈解離発症モデルを作成した。ヘテロ接合性(Myh11ΔK/+)マウスはアンジオテンシンII刺激による大動脈解離発症モデルで、大動脈解離および壁内血栓を示した。血管平滑筋ミオシンの分子構造を解析した。in silicoシミュレーションではK1256の欠損により、コイルドコイル形成が乱れ、Myh11の機能低下が生ずる可能性が示された。K1256の有無によりコイルドコイル形成能の変化をX線結晶構造解析で評価するためには、目的タンパク質の精製度・単分散性の高い試料を調製し、それらを用いてタンパク質結晶を作成する必要がある。ライトメロミオシン(LMM)フラグメントの結晶化で実績のある3種類のタンパク質をそれぞれ融合したMyh11のLMMフラグメントをデザインし、各種の精製タンパク質を調製して結晶化スクリーニングを行った。これまでに最高分解能3.2 ÅのX線回折像を与える結晶を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に引き続き平滑筋ミオシン遺伝子Myh11の新規変異(Exon29 del 1256K)マウスと野生型マウスの表現型を比較検討する。大動脈の収縮・弛緩機能、バイオマーカー、大動脈の組織学的評価、血管壁で発現するRNAの定量的解析、血管平滑筋ミオシンの分子機能など)を解析する。また、FAK、Smad2やMMPsなどの抑制効果が期待できる薬物(ATM阻害薬、KLF阻害薬等)を疾患発症モデルにin vivo投与し、血管脆弱性の改善が示されるか検討する。また、Myh11ミオシン変異マウスが血管と全身の老化にどのような影響をもたらすか、過剰栄養などのストレスを加えたときの代謝調節機能を検討する。またSASP因子の発現、全身臓器の細動脈血管機能、動脈硬化促進作用(ApoEノックアウトマウスとの交配)などを検討するとともに、詳細な分子メカニズムについてATMを中心に明らかにする(ATMノックアウト 、p53ノックアウトマウスとの交配を行う)。さらに、iPS細胞を樹立し、ミオシンのdel1263K変異が血管脆弱性を生じるメカニズムを細胞レベルで解析する。 構造学的には、本研究で得られた結晶では、LMMフラグメントの立体構造を決定するには分解能が不十分であるため、結晶化条件を今後さらに検討して結晶の最適化を図る。分解能が十分に改善しない場合には、結晶化に用いるLMMフラグメントの長さ等を再検討する。また、コイルドコイル形成に及ぼすK1256欠損の影響を調べるため、分光学的測定法等を用いて溶液中での構造情報の取得も検討する。
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Research Products
(1 results)