2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis for the circadian rhythm of host defense system against the cutaneous viral infection
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18H02831
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
川村 龍吉 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70262657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 陽一 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20377542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ワクチン / 概日リズム / ウイルス感染 / 獲得免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年のノーベル生理学・医学賞は、「サーカディアン・リズム(体内時計)を生み出す 遺伝子とそのメカニズム」が選ばれた。近年、生体の概日リズムをつかさどる時計遺伝子がアレルギー性疾患などの様々な疾患と密接に関連していることが明らかとなりつつある。最近我々は、朝あるいは夜に単純ヘルペスウイルス(HSV)をマウス皮膚に接種すると、両群の感染症状や死亡率が大きく異なるという知見を得た。本研究の目的は、研究対象を様々な皮膚関連ウイルス群に拡大し、ウイルスが経皮的に生体に侵入する時間帯により宿主の生体防御反応に差異が認められるか、すなわちウイルスに対する自然免疫・獲得免疫に概日リズムが存在するかを網羅的に検討することにある。本研究による皮膚の「時間ウイルス学」確立に向けた新たな試みは、感染予防学の観点から、あるいは抗ウイルス薬による時間差治療・より有効なワクチン接種法開発の観点からも、臨床医学的に重要な意義があると考える。具体的には、様々な皮膚関連ウイルスに対する宿主の自然免疫および獲得免疫によるウイルス排除能に概日リズムが存在するか否かについて検討することにある。本研究は今後のウイルス感染防御戦略に新しい方向を与えるものであり、トランスレーショナルリサーチ研究として、新規治療・予防法開発の基盤となりうる。また本研究は我々がこれまで開発してきたマウス/ヒト皮膚感染モデルおよび時計遺伝子関連実験技術を駆使したもので、極めて独創的であると考える。 本年度の研究はまずウイルスワクチン接種による抗ウイルス免疫に概日リズムがあるのか、すなわち「ワクチンは何時に接種すると効果的か?」を解明することを目的に解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況: まず、ワクチンの接種時間によって経皮的ウイルス感染に差違が生じるかについて検討した。2種類のHSVエンベロープ糖蛋白 (gB, gD) を抗原とし、各種アジュバントと共にマウスに投与し、HSV獲得免疫が誘導されるかについて、条件検討を行った。 HSV抗原としてはgBが、gDより免疫誘導能に優れており、またMPL, alumを特定の比率で混合したアジュバントを2週間おきに2回筋注することで、ワクチン接種後の経皮的なHSV感染症状が抑制されること(HSV獲得免疫が誘導されること)を確認した。 次に、ワクチンを昼12時(ZT6)、夜12時(ZT18)に上記条件で接種し、その後HSVを経皮感染させ、感染症状を皮疹スコア、麻痺スコア、死亡率で評価した。ウイルス感染9日後における皮疹スコアは、抗原なし群(陽性コントロール):平均 4、ZT18投与群:平均 0.5、ZT6投与群:平均 2であり、ワクチンの効果はZT18がZT6よりも約2倍増強していた。麻痺スコアは抗原なし群(陽性コントロール):平均 1.67、ZT18投与群:平均 0.25、ZT6投与群:平均 1であり、ワクチンの効果はZT18がZT6よりも約4倍増強していた。死亡率は感染9日後の時点では優位な差は見られなかった。 ZT18投与群はZT6投与群よりも、皮疹スコア、麻痺スコアいずれもワクチンの効果が増強(より強力なHSV獲得免疫が誘導されること)が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
HSVワクチンによる宿主獲得免疫応答に概日リズムが存在することが判明した。 今後は下記2点について解析を行う。 1; ワクチンによるHSV獲得免疫の概日リズムを解明するために、ZT6, ZT18接種群のリンパ節内のウイルス特異的細胞傷害性T細胞数を経時的に比較する。さらに、ZT6, ZT18接種群のマウス皮膚からランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞を調整し、naïve CD4+ T細胞、CD8+ T細胞と共培養後、ウイルスペプチドで再刺激し、細胞傷害性T細胞誘導能を比較する。さらにCD4+ T細胞をフローサイトメトリー解析し、ウイルス特異的T細胞のプロファイルを明らかにする。 2:皮膚ウイルス感染症の主要ウイルス(HIV、ヒトパピローマウイルスなど)において、同様の実験を行い、ウイルス免疫に普遍的な現象か否かを明らかにする。
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