2018 Fiscal Year Annual Research Report
Novel Renal Regeneration Technology based on Self-Remodeling Capacity using Innovative Biomaterial
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18H02875
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
八木 洋 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20327547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五島 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究チーム長 (70215482)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80366153)
足達 俊吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90783803)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糸球体 / 大動物 / 腎臓再生 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】現在、4cm未満の腎細胞がんに対する治療法の一つとして部分腎切除が実施されている。しかし、腎臓は切除後に体内で再生することはなく、機能低下による様々な合併症を併発する可能がある。本研究では脱細胞化骨格を足場として利用した腎臓再生の可能性に関して検討した。 【方法】体重15kgのブタより腎臓を採取し、腎動脈よりPBSの還流により血液を洗い流した。同ルートよりドデシル硫酸ナトリウム水溶液を24時間還流し、ブタ腎臓の脱細胞化骨格を得た。別のブタに麻酔下で部分腎切除を実施し、切離面に脱細胞化骨格を縫着した。術後1カ月で犠牲死させ、H.E.染色、免疫組織化学染色および走査型電子顕微鏡検査にて病理学的に評価をおこなった。またタンパク解析を実施し、網羅的なタンパク組成を検証した。 【結果】術後1ヶ月では脱細胞化骨格は肉眼的に3次元構造を保っていた。H.E.染色では骨格内に糸球体や尿細管に類似した構造が認められ、免疫組織化学染色によって糸球体上皮細胞マーカーであるネフリン陽性細胞や近位尿細管上皮マーカーであるAQP1陽性細胞が確認された。また走査型電子顕微鏡検査では糸球体様構造を取り囲む足細胞のような形態の細胞や近位尿細管における刷子縁に類似した細管様構造が一部で認められた。またタンパク解析にによって1000を超える種類のタンパクの残存と、腎臓再生に関わる可能性のあるタンパク群が抽出された。 【考察】部分腎切除後、切離面に脱細胞化骨格を縫着したところ、骨格内に腎構造の再構築が認められた。この結果より、脱細胞化骨格が腎臓の構造的な再生を促す足場として優位に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱細胞化処理によって無細胞化した細胞外骨格が、腎臓の修復機能を持つこと(有効性)を検証するため、実臨床でがん治療のために実施される「腎臓部分切除」手術をブタで再現し、腎臓の欠損部分にこの細胞外骨格を貼り付け、一ヶ月に渡って経時的に評価したところ、体内で腎臓の細胞が入り込み、糸球体構造を始め腎臓の構造が細部に渡って復元することが示された。また病気腎臓の場合の有効性を検証するため、次に現在難病指定を受けており透析導入率の高い遺伝性疾患である「多発性嚢胞腎」のモデルラットを用いて、同様の1ヶ月の観察実験を行なったところ、同じように糸球体を含む腎臓修復機能が示されたが、一方で細胞外骨格内に嚢胞も出現しており、本効果が体内に残った腎臓機能にも影響を受ける可能性が示された。以上の結果は、初年度に目標とした以上に大動物のPOCおよび疾患モデルでのPOCを取得し得たこと、また網羅的なタンパク解析を実施したことから、順調な進捗を得ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、泌尿器科との合同で慢性腎不全モデルの作製を実施し、修復効果を機能的に解析するための準備を開始する。また学会発表を行った結果、残存した腎臓側、および接着させた骨格内部での遺伝子発現変化についての疑問を受けたため、手術後の異なる腎臓部分の網羅的遺伝子解析を行って、正常腎臓との比較解析によって、この臓器骨格が体内で何らかの遺伝子発現変化をもたらし得るのかについて、当初計画に加えて解析することとした。また、合わせて当初計画策定時にはできなかった、ブタのCT撮像が近隣動物病院において可能になったため、臨床的・機能的評価項目として、造影CT撮影を加え、血流や尿産生を肉眼的に確認できる有効な指標として活用する。そのために次年度に外注費を活用して、外部でCT撮影を定期的に実施する。 多発性嚢胞腎モデルについては継続して検証を進め、各種免疫染色や腎機能解析を実施して、病気腎における臓器骨格の治療意義を検証する予定である。このモデルで、2018年度に購入した小動物用腎機能評価チャンバーを有効活用して実験を進める。 2019年度中には、まず大動物を用いた実験データをまとめて論文化を予定している。
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Research Products
(3 results)