2019 Fiscal Year Annual Research Report
肺腺癌のFounderエピドライバーに着目した低侵襲診断とエピゲノム治療法の開発
Project/Area Number |
18H02894
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
井本 逸勢 愛知県がんセンター(研究所), 分子遺伝学分野, 副所長兼分野長 (30258610)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺腺癌 / エピゲノム / ドライバー / リキッドバイオプシー / 治療標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺腺癌では様々なdriver変異が同定され分子標的治療の開発が進んでいるが、多くの症例でactionable変異が検出されず、検出されても癌の時間的空間的不均一性を基盤に耐性が獲得される。これらを克服し得る診断・治療標的分子異常として、申請者らは肺腺癌の早期から高頻度に癌特異的高メチル化を示すfounder epi-driver型癌抑制遺伝子 TRIM58の同定に成功した。本研究では、新たな肺腺癌のエピゲノム予防・診断・治療法の構築を目的に、①癌化予測可能な複数のepi-markerを血漿で検出する低侵襲での早期・再発診断や治療効果予測アルゴリズムの開発、②体系的な新規epi-driver遺伝子の同定と発癌機構の解明、③epi-driver関連パスウェイの標的化合物in silicoスクリーニングやエピゲノム編集技術を応用した予防・治療法の開発に取り組む。 本年度は以下の成果を得た。 1)新たに収集した肺腺癌の前浸潤病変と追加早期癌症例セットを用いて、取得済みの癌部特異的メチル化配列リストの中から、癌化早期でメチル化されるCpG配列を追加抽出し、公的データベースで癌部特異的メチル化の程度や頻度が確認できたものを、新たにマーカー配列セットに加えた。 2)循環血漿中での標的メチル化マーカーCpG配列の検出配列と方法の最適化のために、デジタルPCRに代えて高深度次世代シーケンスによる検出系を検討することにより、感度・特異度を確保可能な検出配列と検出方法をマーカーごとに見直した。 3)標的CpG配列で発現が制御される遺伝子から新たに見出していた癌促進遺伝子候補GAD1の機能解析から、癌促進に働くことを確認した。メチル化により発現が消失する複数のepi-driver候補の中からも、発現回復により癌抑制に働き得る遺伝子が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間中に実施する予定であった循環血漿中での複数のメチル化マーカーCpG配列のデジタルPCRでの検出条件を探索する過程で、当初の想定に反し、配列の低特異性のため必要な感度が確保できる条件が得られない配列が多いことが判明した。研究遂行上、マーカー検出が不可欠なため計画を見直し、ペプチド核酸マスク併用PCRまたは高深度次世代シーケンスで高感度検出条件を探索し、マーカー毎に最適な方法を決定した上でその後の計画に繋げる必要が生じた。このため、追加検体での高深度次世代シーケンスによる高感度検出を実施し、マーカーごとに検出配列・検出方法の最適化を行ったために、若干の遅れが生じた。しかし、研究計画の変更により設定しなおした研究期間内に計画を完了できており、その他の研究計画項目には遅れは生じておらず、研究全体では大きな遅れにはなっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)肺腺癌に対する新規の癌特異的早期メチル化マーカーが追加で取得できたために、これらに対しても、メチル化マーカー検出系の最適化と精度の検証を行う。既に確立しているマーカーと組み合わせることで、肺腺癌の早期診断の評価アルゴリズムを構築し、別検体で検証を行う。 2)がん特異的メチル化標的遺伝子からepi-driver候補の追加選択を行い、細胞株における強制発現での実験的機能解析により増殖活性や浸潤・転移能、薬剤抵抗性などの癌抑制活性の検討からの候補絞り込みをを行う。また選択された候補に関しては、メチル化解除による発現回復の確認も実施する。エピゲノム編集によるメチル化解除だけでは発現回復が充分でない遺伝子がある、あるいは機能解析実験で使用する細胞株ごとに発現回復の程度にばらつきがあるなどの理由で、機能評価やパスウェイ解析が困難な場合には、遺伝子や細胞株に合わせた実験系の最適化を行う。 3)発現回復系を用いた表現型の確認、発現回復前後の網羅的発現解析による癌抑制機序の検証、遺伝子発現プロファイルからのパスウェイ解析による治療標的部位・分子の推定を行う。さらに、遺伝子発現プロファイルの既存薬剤応答遺伝子プロファイルデータとの相関から、epi-driver分子の機能を補完する可能性のある薬剤の探索や治療標的パスウェイや分子を想定したin silico薬剤スクリーニングを行い、治療法開発を推進する。
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Research Products
(26 results)