2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of neuroinflammatory mechanisms linking general anesthesia
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18H02898
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
河野 崇 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (40380076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 正尚 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (20158380)
村田 和子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (50325429)
高橋 章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90304047)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 術後せん妄 / 術後神経認知異常 / 脳内神経炎症 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
術後認神経認知異常に脳内神経炎症が関与するかどうかラット開腹手術モデルを用いて検討した。開腹手術は、イソフルラン麻酔下で2cmの腹部正中切開を行い、小腸に対して手術操作を模した探索様刺激を加えることで行った。この開腹手術モデルでは術後3日目まで有意な末梢血サイトカイン濃度 (IL-1β、TNF-α) の上昇 、つまり全身炎症反応 が生じるため、開腹手術後2日目の評価を術後急性期、開腹手術7日目以降を術後回復期とした。脳内神経炎症反応は、脳各部位での炎症性サイトカイン濃度測定、mRNAの定量評価、および免疫組織試験により行った。開腹手術後2日目、海馬、前頭前野を中心に脳全体で急性脳内炎症が生じた。この急性脳内炎症はラットの年齢に関係なく生じ、その程度は痕跡恐怖条件付け課題で評価した認知行動異常と相関していた。この急性期にステロイドを全身投与したところ、全身炎症反応は減少したが、脳内神経炎症に反応には影響しなかった。しかし、術後急性痛は急性脳内神経炎症反応に関与することが明らかとした。これらのことから、術後急性脳内神経炎症には、液性経路というよりむしろ神経性経路を介して全身-脳相関反応が生じていると推測された。一方、開腹手術後7日目、高齢ラットのみに海馬に限局した脳内神経炎症が生じた。これらの結果から、術後せん妄には急性脳内神経炎症が関与すること、術後認知機能障害には急性脳内神経炎症が年齢に脆弱な脳部位 (海馬)で 慢性化した結果生じる可能性が示唆された。脳内神経炎症にはミクログリアが中心的な役割を果たすことが知られており、麻酔および手術侵襲がどのような経路でミクログリアに異常活性を誘導するかが術後認神経認知異常の予防・治療戦略を考えるうえで重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、全身麻酔薬のミクログリアおよび脳内神経炎症に及ぼす影響ついて高齢動物を用いた in vivo 実験系で確認し, さらに電気生理学的手法を組み合わせてこれらの細胞内シグナル機序を解明することである。特に当該年度では、術後脳内神経炎症およびそれに関連する認知行動異常を検出する動物モデルを作製することを目標としていた。今回検討した高齢ラット開腹手術モデルは、1) 急性から慢性の脳内神経炎症が生じること、2) 行動評価により認知異常が検出できること、3) 脳内神経炎症の程度と術後認知行動異常が相関すること、が明らかとなり、今後の研究の発展に繋がると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢ラット全身麻酔モデルにおけるミクログリアの活性化とin vivo PETイメージング解析を行う。方法として、若年2-4ヵ月齢および高齢24-25ヵ月齢SD系雄性ラットを用いる。全身麻酔モデルとして, イソフルランを2時間吸入させる。対照群は酸素のみ吸入させる。認知機能は, 1, 3, 7, 14日後に新奇物体認識試験および恐怖条件づけ試験を用いて評価する。脳内神経炎症は, 全身麻酔14日後認知試験後に脳の各部位(これまでは海馬が注目されてきたが前頭前野, 扁桃体なども関与する可能性がある)を摘出し, 炎症性サイトカインのmRNA発現量をRT-PCR法で, 蛋白量をELISA法で評価する。PET試験は術前・術後1, 7日後に実施する。[11C](R)-PK11195は, ポジトロン核医学利用専門委員会が認定した放射性薬剤の基準に従って, 当院のサイクロトロンで多目的合成装置を利用して作成する。無麻酔下でのPETイメージングを行うため, 撮像中は低侵襲の頭部固定装置を用いる。また, ストレスによる影響を軽減するために, [11C](R)-PK11195の自動投与装置を用いる。 エミッション撮影後, [11C](R)-PK11195を静脈から自動注入器を使って急速注入 (標準210 MBq)し, 直ちに全脳ダイナミック撮像を行う。PETイメージングにより, 脳のどの部位がどの程度影響を受けたかを明らかとする。
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Research Products
(3 results)