2018 Fiscal Year Annual Research Report
痛みストレスによる腫瘍免疫増悪化と脳内報酬系亢進による免疫回復機構の解析
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18H02900
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
成田 年 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40318613)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレス / 脳内報酬系 / 腫瘍免疫 / CRH / D1-MSN |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、遺伝子工学と神経科学の融合技術を駆使した人為的特定脳神経操作技術を確立し、脳内ストレス応答性神経や脳内報酬系の神経ネットワークの賦活による脳-腫瘍免疫連関について解析を試みた。人為的特定脳神経操作については、光遺伝学的手法あるいは薬理遺伝学的手法を応用し、各種 Cre ドライバーマウスにAAV-FLEXベクターを特定脳領域へマイクロインジェクションすることで、実験セットアップを行った。まずは、生体のストレス応答の起始核である視床下部室傍核コルチコトロピン放出ホルモン (CRH) 神経特異的に活性化型遺伝子改変受容体 (hM3Dq) を発現させたマウスを作製した。このマウスに対し、がん細胞を移植し、適正用量のclozapine N-oxide (CNO) の投与による視床下部室傍核 CRH 神経の特異的活性化を行ったところ、HPA-axisの賦活化を介した腫瘍の増悪化が認められた。一方、抑制型遺伝子改変受容体 (hM4Di) を視床下部室傍核 CRH 神経に特異的に発現させたマウスを作製し、同様に CNO の投与により視床下部室傍核 CRH 神経の特異的抑制制御を行ったところ、抗腫瘍効果が認められた。次に、脳内報酬系亢進による腫瘍免疫への影響について検討を試みる目的で、側坐核ドパミンD1受容体陽性中型有棘神経 (D1-MSN) 特異的にhM3Dqを発現させたマウスを作製した。このマウスに対し、がん細胞を移植し、CNO投与による D1-MSNの人為的活動操作を行ったところ、D1-MSNの特異的活性化により抗腫瘍効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特定脳神経操作技術法の確立において、各種 Cre ドライバーマウスやAAV ベクター等の入手、脳内局所微量注入法等の技術習得が比較的速やかに達成できたため、本研究を実施することができた。また、マウス由来がん細胞の入手、担がんマウスモデルの作製およびがんの進行の評価系の確立も速やかに行うことができたため、当初の計画通りに研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果として、ストレス応答性である視床下部室傍核 CRH 神経の活性化による腫瘍の増悪化および側坐核D1-MSN の特異的活性化による抗腫瘍効果を確認した。今後は、これらの相反した効果が生じる脳内ストレス応答性神経と脳内報酬系の神経ネットワークの相互作用に着目し、がん疼痛制御や腫瘍免疫の変化を詳細に解析する。特に、側坐核の神経活動の調節を担う脳内報酬回路網の中核であり、多様性が確認されている中脳辺縁ドパミン神経群に着目し、特定脳神経操作技術の応用による中脳辺縁ドパミン神経群の活動調節をそれぞれ行った際の腫瘍免疫の変化について解析を試みる。さらには、これらの動物からの血液および組織を摘出し、血中ストレスホルモン量、血中サイトカイン量及び脾臓などの組織における各種免疫細胞数の定量などを行い、脳-末梢免疫連関機構のメカニズム解析に着手する予定である。
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Research Products
(5 results)