2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of functional involvement of RGM, an inhibitory factor for neuronal regeneration, and development of RGM-targeted therapy in critical illness.
Project/Area Number |
18H02903
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 直也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (50359808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田崎 修 長崎大学, 病院(医学系), 教授 (90346221)
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 頭部外傷 / RGMa / Neogenin / サイトカイン / RT-PCR / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
頭部外傷に引き続くRGMaと受容体であるNeogeninの遺伝子発現の推移を, IL-1b,IL-6,TNF-α(サイトカイン),CCR2,CXCR2(ケモカイン),Iba1(活性化マイクログリア), GFAP(活性化アスロトサイト)と共に解析した。脳損傷モデルはPneumatic Cortical Impact Deviceを使用してマウスにて作成した。損傷後,1, 3, 7, 14日目に脳を摘出の上,損傷部領域組織からtotal RNAを抽出し,q PCRを施行した。シャム群は,Deviceによる脳損傷以外の工程を経たマウスとした。 RGMaとNeogeninは,脳損傷24時間後には有意な発現低下を認めた。RGMaは3日後には24時間後よりも発現が回復するものの,有意に低い状態が持続した。Neogeninは3日後にはさらに発現量が低下した。7日目には,RGMa,Neogeninの両者共に,シャム群に比し有意差がないレベルまで発現が改善し,RGMaに関しては,14日目に基礎値よりも上昇する傾向を示した。サイトカイン,ケモカインマーカー群のいずれも,24時間後にピークを示す形で発現が増強し,IL-6以外は14日目まで有意差を持った持続的な上昇が認められた。Iba1の発現パターンはRGMaと類似し,24時間後を最低値として3日目まで有意に低下し,その後回復した。対照的に,GFAPは7日目以降,有意な上昇を示した。 頭部外傷にて誘導される内在性再生機構が,継続する炎症機構で破綻する。RGMa発現回復の過程で,最終的にはアストロサイトの活性化によりグリオーシスが進行する。頭部外傷後早期にRGMa発現を抑制することで神経再生を促進することでできるのではないかと考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度にて,ターゲット分子であるRGMaとその受容体のNeogeninの遺伝子発現が,頭部外傷後に早期一過性に減少することが明らかとなった。これにより,頭部外傷後の神経再生抑制に,RGMa-Neogeninシグナル機構の発現回復が関係していることを示唆することができた。このRGMa-Neogeninシグナルの回復相を遅延させることにより,神経再生を誘導することができる可能性が拓かれた。当初は,頭部外傷後の神経再生抑制の原因として,脳損傷に引き続きRGMa-Neogeninシグナルが増強されることを予想していたが,むしろ反対の結果になったことは驚きであった。元々,脳の発達が完了した後には,過剰な神経再生が誘導されないようにRGMa-Neogeninシグナルが働くことで,機能的な脳の定常状態が保持されていると考えられる。頭部外傷早期にRGMa-Neogeninシグナルが基礎レベルまで回復することそのものが,脳損傷修復の阻害要因になっていると考えられ,同時期に抗RGMa中和抗体が投与することが理にかなった治療法であることを支持するデータが得られたことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度確認された頭部外傷後のRGMa,Neogeninの遺伝子発現の経時的な変化を,Western blotting法を用いてタンパクレベルでも確認していく。また,脳損傷後にいずれの細胞群がRGMa, Neogeninの発現を担っているのか,免疫組織化学的に同定を行なっていく。RGMaとIba-1に関しては,遺伝子レベルでの発現パターンが類似していた。RGMa発現の源として,特にミクログリアに注目していく。更には,頭部外傷直後に機能的抗RGMa中和抗体を投与することで,脳損傷に対する保護・再生効果が発揮されるかを実際に評価し始める。特に,損傷領域面積,炎症やグリオーシスを指標として,これらの伸展抑制効果を形態学的,分子生物学的に解析していく。同時に,臨床効果の評価としてシリンダーテストを用いて行動学的な解析も行っていく。
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