2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of physiological and pathological function of membrane-bound and soluble RANKL
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18H02919
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 一男 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00436643)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨代謝 / サイトカイン / RANKL / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨の恒常性は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスによって維持される。サイトカイン・RANKLは破骨細胞分化の必須因子であり、間葉系支持細胞から供給される。RANKLは膜型として発現する他、細胞外領域で切断され可溶型タンパク質として産生されることが知られているが、膜型・可溶型のそれぞれの生理的意義は詳しく解析されていない。またRANKLは免疫組織形成や乳腺成熟、がんなど多岐に亘る生体制御機能を有するが、いずれにおいても膜型と可溶型の寄与については不明である。そこで本課題ではゲノム編集技術による遺伝子変異マウスの解析を通じて、膜型RANKLおよび可溶型RANKLの生体制御能の解明を目指す。本年度では、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いて、可溶型RANKLが産生されないマウス (RANKLΔS)、および膜型RANKLが産生されないマウス(RANKLΔMマウス)を作製した。骨芽細胞をはじめとした破骨細胞支持細胞およびT細胞を用いたin vitro解析、ならびに血清中、骨髄液中のRANKLの測定により、RANKLΔSでは可溶型のみが欠損していること、RANKLΔMマウスでは膜型RANKLのみが発現されないことを検証した。さらに、RANKLΔSマウスとRANKLΔMマウスの骨組織を、μCT解析、軟X線解析、病理組織標本を用いた骨形態計測を通じて解析した。可溶型RANKL欠損マウスは、RANKL欠損マウスと異なり正常な歯の萌出が確認され、骨量、骨密度、破骨細胞数も野生型マウスと同等であった。以上より、可溶型RANKLは生理的状況下における骨代謝には必須ではないことを明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RANKLΔSマウスおよびRANKLΔMマウスの作製も順調に進み、概ね計画通りに解析が進んでいる。RANKLΔSマウスでは、血清中、骨髄液中、新生仔頭蓋冠由来骨芽細胞の培養液中に可溶型RANKLが全く検出されず、一方膜型RANKLの発現は正常であったことから、可溶型RANKLのみを選択的に欠損したマウスを作出することに成功している。しかしながら、RANKLΔSマウスの骨表現型は正常であったことから、可溶型RANKLは生理的状況下における骨代謝には必須ではないことをin vivoレベルで実証することができた。一方、RANKLΔMマウスでは、興味深いことに歯の萌出異常が認められ、顕著な骨量上昇が認められている。歯の萌出異常の程度や骨量に個体間で幾らか差異が認められるため、引き続き精査して調べていく予定である。今年度で両マウスが作製できたことから、次年度以降の免疫組織形成・乳腺成熟の解析、炎症性骨疾患、閉経後骨粗鬆、がんなどの病態モデル解析が計画通りに進められる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
RANKLΔSマウスとRANKLΔMマウスにおける胸腺上皮細胞の分化、リンパ節形成、乳腺成熟、乳腺上皮細胞の分化を解析し、組織発生における膜型RANKLと可溶型RANKLの役割を明らかにする。また各種の病態モデルを用いて、膜型RANKLおよび可溶型RANKLの病理学的意義を明らかにする。C57BL6背景のRANKLΔSマウスを用いて、閉経後骨粗鬆モデルとして卵巣摘出(OVX)モデル、およびB16F10メラノーマ細胞株、EO771乳がん細胞株を用いた腫瘍移入モデルを実施する。左心室投与による骨転移モデルのほか、静脈注射による肺転移モデル、皮下移植による原発巣モデルも実施する。また、関節リウマチモデルとしてコラーゲン誘導性関節炎モデルを実施する。コラーゲン誘導性関節炎モデルはC57BL6背景では発症率が極めて低く、より発症率が高いDBA1背景で評価する必要がある。そこでCRISPR/Cas9法により、DBA1背景のRANKLΔS、RANKLΔMマウスを新規に作製することも計画している。以上の解析結果から、病的状況下における膜型RANKLと可溶型RANLKLの役割を明らかにする。
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