2018 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素下での破骨細胞分化促進機構の解明と関節リウマチの新たな骨破壊治療法の開発
Project/Area Number |
18H02926
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 浩一 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60806793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉富 啓之 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (50402920)
寺尾 知可史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (60610459)
伊藤 宣 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70397537)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 低酸素 / 関節リウマチ |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチは炎症性疾患で、関節リウマチの滑膜組織では細胞増殖の亢進、炎症細胞の浸潤に伴い酸素需要が増大し、低酸素状態となる。低酸素下では関節破壊の主役となる破骨細胞分化が促進する。本研究では低酸素下破骨細胞分化促進の機序を包括的に解明し、関節リウマチ特異的な骨破壊の治療法を探索することを目的とした。低酸素下破骨細胞分化促進に関わる転写因子の同定として、ゲノムワイド解析の結果かから予想された転写因子をsiRNAにてサイレンシングを行ったが、破骨細胞形成に差を認めず、低酸素で活性化されてさらに破骨細胞分化における役割が未知の転写因子は同定できなかったが、これらとともに働く因子が、siRNAならびに阻害剤を使った実験で、重要であることを発見した。この破骨細胞分化因子は、少なくとも破骨細胞分化における細胞代謝に関わる因子を制御していることがわかった。また、COMMD1が低酸素下破骨細胞分化に重要であることを以前に報告したが、COMMD familyのCOMMD2-COMMD10において、COMMD1同様に破骨細胞分化抑制因子である因子がsiRNAを用いた実験で同定された。この因子は他の細胞系も含めてその働きがほとんど分かっていない分子であるが、低酸素下ではたんぱくレベルで発現が抑制され、その活性が抑制されていた。今後、新たに同定した破骨細胞分化因子において、その機能、既知の破骨細胞分化因子や低酸素関連遺伝子との相互作用、関節リウマチモデルマウスにおいて機能や役割を同定していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1-1.低酸素下破骨細胞分化促進に関わる転写因子の同定。低酸素下で破骨細胞分化に関わる分子の同定として、ヒトCD14陽性細胞に対して、RANKL刺激と低酸素刺激において発現が亢進した352の遺伝子に対して、Transcription factor motif解析を行ったところ、33個の転写因子がこれらの遺伝子変化を制御していることが予測された。これらの因子が実際に破骨細胞分化に関与しているか解明するため、ヒトCD14陽性細胞にsiRNAにてノックダウンを行い、破骨細胞分化を誘導した。これまで破骨細胞分化における機能が未解明の転写因子にsiRNAにてノックダウンを行い破骨細胞分化を誘導したが、破骨細胞分化に有意な差を認めなかった。しかし、これらの転写因子とともに働くある因子において、siRNAにてノックダウンすると破骨細胞分化が抑制され、またこの因子に対する阻害薬でも破骨細胞分化は抑制された。 1-2. 同定された転写因子の破骨細胞分化における機能の解析。この破骨細胞分化因子のmRNAにおける解析では、少なくとも破骨細胞分化における細胞代謝に関わる因子を制御していることが認められた。 2.COMMD2-COMMD10について低酸素下破骨細胞分化にかかわる分子を同定する。上記の実験と同様に、ヒトCD14陽性細胞にsiRNAにてノックダウンを行うことで、低酸素下破骨細胞分化に寄与する因子の同定を行った。COMMD1同様に破骨細胞分化抑制因子である因子が同定された。この分子は他の細胞系を含めてその働きがほとんど調べられていない分子であるが、低酸素下ではたんぱくレベルで発現が抑制され、その活性が抑制されることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.低酸素下破骨細胞分化促進に関わる転写因子の同定 本因子の破骨細胞分化に関わるメカニズムならびに炎症性関節疾患における役割を同定する。すでに破骨細胞分化の細胞代謝に寄与する分子であることを同定しており、具体的にどのように細胞代謝に寄与するか調べるとともに、他の因子にも寄与していないか調べる。また、関節リウマチを初めとする関節炎でこの因子がどのように誘導されているか、各種サイトカイン刺激による誘導の有無、生体サンプルでの発現の程度などを調べる。また、本因子に関しては阻害剤の利用が可能であるので、関節炎モデルマウス使用して、候補分子の炎症性関節炎での骨破壊における役割を調べるとともに、その阻害剤の炎症性関節炎における効果についても検討を行う。また骨粗鬆症モデルマウスも使用して、骨粗鬆症薬への応用も検討する。 2.COMMD2-COMMD10について低酸素下破骨細胞分化にかかわる分子の同定 上述の如く、破骨細胞分化抑制因子である因子が同定され、低酸素下ではたんぱくレベルで発現が抑制され、その活性が抑制される分子を同定した。今後、低酸素のキープレーヤーであるHIFや炎症と破骨細胞分化をつなげるNF-kBとの相互作用についても調べる。ゲノムワイドにもこの分子の破骨細胞分化における役割を調べ、パスウェイ解析などを通して、低酸素下破骨細胞分化において新たな治療標的の同定を試みる。また、関節炎モデルマウスも使用して候補分子の炎症性関節炎での骨破壊における役割を調べる。
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