2019 Fiscal Year Annual Research Report
膜貫通型分子Enpp1を介した正所性カルシウム沈着と老化制御
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18H02930
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮本 健史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任教授 (70383768)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 整形外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の超高齢社会の到来を受けて、骨粗鬆症の患者数は増大の一途をたどっており、骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折の発生数も増加し続けている。骨粗鬆症は骨密度の低下等により骨の脆弱性が増大し、骨折のリスクが増大する疾患と定義され、加齢が骨密度低下のリスクとなることが知られているが、加齢による骨密度減少のメカニズムの詳細は明らかではなかった。申請者は1回膜貫通型分子Enpp1 (ectonucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1)に着目し、Enpp1の機能不全型自然変異マウスであるttw (tip toe walk)マウスの解析を行い、ttwマウスではリン代謝の恒常性維持機構が破綻していること、このことによりカルシウムの異所性沈着をきたし、そのカルシウムの供給のために骨からはカルシウムが喪失し、結果として骨量が減少することを明らかにした。このEnpp1がどの臓器でこのような全身的なリンやカルシウムの恒常性や骨密度、老化を制御するのかを明らかにするため、Enpp1 floxマウスを新規に作製し、生殖系列にのるマウスの樹立に成功した。全身的にCreを発現するCAG Creマウスと交配し、CAG Cre/Enpp1-flox/flox (Enpp1 cKO)マウスを作成したところ、ttwマウス同様の表現型を呈したことから、Enpp1 floxマウスの作出に成功したことが確認できた。現在、他の臓器特異的なCreマウスと交配することで、責任臓器の同定を進めているところである。さらに、Enpp1の転写制御領域の下流において、Enpp1のスタートコドンからin frameでノック インするレポーターマウスの樹立を行い、リン投与下で発光を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、Enpp1遺伝子機能不全マウスであるttwマウスの解析から、Enpp1が全身的なカルシウム・リン代謝、ならびに老化を制御することを明らかにしている。リン代謝は腸管や骨、腎臓など、全身の様々な臓器により恒常性が制御されていることが知られている。そこで、Enpp1を発現を発現し、リン代謝の恒常性制御や老化制御を行う責任臓器を同定するため、臓器特異的なEnpp1欠損マウスを作製するためのEnpp1 floxマウスの作出に今回成功している。CAG Creと交配することで、全身的にEnpp1を欠損させたEnpp1 cKOマウスの解析からは、ttwマウスと同様の表現型を呈することを見出しており、Enpp1 floxマウスの樹立している。Enpp1 floxマウスは国際的にもまだ樹立の報告はなく、新規の成果と言える。さらに、Enpp1の臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作成するため、様々な臓器特異的Creマウスとの交配を進めており、これらの臓器特異的なEnpp1コンディショナルノックアウトマウスの樹立ならびに解析をほぼ完了した。また、Enpp1の発現を生きた状態でリアルタイムにモニターするためのEnpp1レポーターマウスの作出を行い、すてにこの樹立にも成功し、リン投与下に発光の確認を完了している。以上のように、予定していた組織特異的Enpp1欠損マウスの作出およびその解析、Enpp1レポーターマウスの樹立が進行あるいはほぼ完了しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている臓器特異的Enpp1コンディショナルノックアウトマウスの作出や解析を完了させる。特に、各々の系統において、リンやカルシウム代謝の恒常性制御、老化制御の破綻の有無や異常を中心に解析を行い、リン負荷実験等により血中FGF23や活性型ビタミンD濃度の測定等を行う。これらの解析によりEnpp1を発現し、Enpp1を介したカルシウム・リン代謝および老化を制御する責任臓器を決定する。さらに、責任臓器が決まることで、責任細胞の同定やそのシグナル伝達経路等の解明も可能になると考えている。また、Enpp1レポーターマウスにおいても、マウスの作出は完了し、リン負荷時に発光をin vivo imagingで確認できており、これらのツールの解析を進めることで、リン・カルシウム代謝の恒常性制御ならび老化の恒常性制御機構を解明する。以上の解析結果については、学会や学術論文等で公表していく。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Oral administration of N-acetyl cysteine prevents osteoarthritis development and progression in a rat model.2019
Author(s)
Kaneko Y, Tanigawa N, Sato Y, Kobayashi T, Nakamura S, Ito E, Soma T, Miyamoto J, Kobayashi S, Harato K, Matsumoto M, Nakamura M, Niki Y, Miyamoto T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 9
Pages: 18741
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] CTLA4-Ig directly inhibits osteoclastogenesis by interfering with intracellular calcium oscillations in bone marrow macrophages.2019
Author(s)
Okada H, Kajiya H, Omata Y, Matsumoto T, Sato Y, Kobayashi T, Nakamura S, Kaneko Y, Nakamura S, Koyama T, Sudo S, Shin M, Okamoto F, Watanabe H, Tachibana N, Hirose J, Saito T, Takai T, Matsumoto M, Nakamura M, Okabe K, Miyamoto T, Tanaka S.
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Journal Title
J Bone Miner Res.
Volume: 34
Pages: 1744-1752
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Potential involvement of semaphorin 3A in maintaining intervertebral disc tissue homeostasis.2019
Author(s)
Mima Y, Suzuki S, Fujii T, Morikawa T, Tamaki S, Takubo K, Shimoda M, Miyamoto T, Watanabe K, Matsumoto M, Nakamura M, Fujita N.
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Journal Title
J Orthop Res.
Volume: 37
Pages: 972-980.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cooperation of PU.1 With IRF8 and NFATc1 Defines Chromatin Landscapes During RANKL-Induced Osteoclastogenesis.2019
Author(s)
Izawa N, Kurotaki D, Nomura S, Fujita T, Omata Y, Yasui T, Hirose J, Matsumoto T, Saito T, Kadono Y, Okada H, Miyamoto T, Tamura T, Aburatani H, Tanaka S.
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Journal Title
J Bone Miner Res.
Volume: 34
Pages: 1143-1154
DOI
Peer Reviewed
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