2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel therapeutics for autoimmune inner ear disorder by using new transgenic mouse model
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18H02952
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00169179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤岡 正人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70398626)
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)
細谷 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30645445)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己免疫 / 耳科学 / 難聴 / メニエール病 / 橋渡し研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
内耳性難聴の原因のひとつに自己免疫の関与が古くから提唱されており、自己抗体や標的タンパクなど多くの知見が蓄積している。我々は蝸牛感覚上皮への免疫寛容の破綻が生じる新規トランスジェニックマウスモデルを作製し、内耳感覚上皮に対するT細胞の免疫学的監視とその病態生理を明らかにしてきた。特に蝸牛感覚上皮への CD4+T細胞による自己免疫発動は低音の変動性難聴とめまい行動を引き起こし、組織学的には内リンパ水腫を呈していた。 本研究では、この一見関係ない感覚上皮への免疫寛容破綻と内耳リンパ液の恒常性破綻を結びつける機序を解明し、急性期から亜急性期の新規治療法とバイオマーカーの探索をする目的で、網羅的遺伝子解析を行った。蝸牛、内リンパ嚢、全血球を解析対象とし、遺伝子型間での比較を行った。興味深いことに遺伝子発現の変化は内リンパ嚢で最も著名であり、また血液においても複数の遺伝子の発現上昇を認め、この中には分泌型因子も含まれていた。さらにパスウェイ解析を行い、それぞれの部位でどのような細胞生物学的現象が生じているかを検討した。 検討結果からマウス蝸牛での有毛細胞上の抗原はT細胞による監視下にあり、その抗原提示は蝸牛内で行われていることが示唆された。極めて興味深いことに、自己免疫マウスでは内リンパ嚢においては繊毛形成やムチン分泌に関連する遺伝子が誘導されており、免疫反応の結果としてリンパ液の組成や粘稠性に変化を生じ、内リンパ水腫が生じる可能性が示唆された。この仮説は内リンパ水腫に対する新しい治療標的の可能性を示唆するものであり、新規治療法に向けた検討を今後加えていきたい。 また他にも特定のケモカイン誘導なども認め、内耳における免疫の恒常性の重要性と、その破綻によるインパクトの大きさが明らかになった。これらについて現在投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子解析が膨大であり、想定以上に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在検討中の遺伝子解析の結果を基に、予定通り引き続き研究を進めていく。
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