2018 Fiscal Year Annual Research Report
先駆的癌性EMTマーカー分子の機能解析と口腔癌由来循環内腫瘍細胞の検出への応用
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18H02969
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
齋藤 正夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90345041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌細胞 / EMT / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌が転移する上で、脈管系浸潤は必須のプロセスであり、がん細胞が脈管・循環内環境に適応するために上皮間葉転換(EMT)を獲得している可能性が、現在非常に強く示唆されている。研究代表者は、これまでのEMTに関する研究実績をもとに、EMT時に発現制御される新規分子マーカーの同定に一部成功し、悪性度との相関性も明らかにしてきた。そこで、本研究では、これらの分子マーカーならびに、申請者が見出したEMT時のユニークな選択的スプライシング制御によって調節される分子をも指標とした、EMT獲得口腔癌の新規な分化マーカーの探索をおこなった。 複数の選択的スプライシング制御によって調節される分子を解析した結果、TGF-b誘導性EMT時に変動する分子は検出できず、また悪性分化度の異なる乳癌細胞での検索でも検出できなかった。この解析に関しては、現在も継続して研究している。 一方、EMTはEMT-TF(EMT転写因子)と呼ばれる2-3種類の転写因子で制御されている。その中で、乳癌細胞ではZEB1がもっとも悪性度と正の相関を示していることをすでに報告し、本研究で口腔癌の悪性度と比較すると、乳癌細胞と同様にZEB1が最も正の相関を示した。そこで、ZEB1の発現を制御するような転写因子を検索したところ、ETS1がZEB1のプロモータ活性を強力に増強することを明らかにした。ETS1はETSファミリーのプロトタイプであり、その他の因子でも同様に検討すると、ESE1は逆にZEB1プロモータ活性を抑制した。現在詳細な分子機構を検討しながら、投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
選択的スプライシング制御によって調節されるmRNA分子を、すでに施行したエクソンアレイやcDNA発現解析の結果をもとに探索した。その結果複数の分子に着目し、TGF-b誘導性EMT時や乳癌細胞の悪性分化度との相関性を検討したが、十分な相関性を検出できなかった。現在、さらに分子群を広げ、解析をおこなっており、この点は進捗が少し遅れている。 一方、複数存在するEMT-TFと口腔癌の悪性度との関連性は明らかにできた。また乳癌同様にETS1がZEB1の発現を上昇させることも明らかにでき、現在論文投稿準備中であり、この点は順調である。さらに、ETSファミリーのESE1がZEB1発現を抑制すること、さらにETSファミリーのgeneXもZEB1発現を抑制することを見いだし、現在分子機構に関し研究を進めており、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ETSファミリーのESE1がZEB1発現を抑制することは乳癌細胞を用いてすでに報告した。本研究では口腔癌を用いて同様に解析した結果、乳癌細胞と同様に、ESE1がZEB1発現を抑制することがわかった。さらに、ETSファミリーのgeneXもZEB1発現を抑制することを新たに見いだした(投稿準備中)。そこで、今後はこれらのZEB1発現抑制の分子機構を分子レベルで解析を行っている。さらに、ESE1やgeneXの発現を病理標本や、マウスを用いたin vivoでの実験で検証も行っている。また、ESE1は遺伝子変異がすでに報告されており、この遺伝子異常とZEB1発現との関連性も検討し、geneXでの遺伝子変異をmRNAやgenomeで探索する。
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Research Products
(4 results)