2019 Fiscal Year Annual Research Report
「好不調の波」を抑える:身体表現の揺らぎ発現メカニズムの解明
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18H03143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 匡樹 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (40392196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 耕彦 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30540611)
野崎 大地 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70360683)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 運動制御 / 共同行為 / 経頭蓋電気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
一旦学習したはずの運動,昨日まで絶好調だった運動のパフォーマンスが,いつのまにか不調に陥り,なかなか抜け出せない。ペアの競技でも,なぜか二人のパフォーマンスがうまく噛み合わなくなる。「好不調の波」と評される我々のパフォーマンスの揺らぎは,なぜ,どのように生じるのだろうか?どうすればこの揺らぎを阻止できるだろうか?本研究では,「解が冗長な状況下で生じる身体表現の変動」や「社会的相互作用による最適状態からの逸脱」が,この揺らぎに関与しているという仮説を実験的および理論的に証明する。そして,この好不調のゆらぎを阻止する手立てとして経頭蓋電気刺激法を適用し,最適パフォーマンス時の運動記憶の復活を試みた。 昨年度、我々は二人組の共同力調整課題においてどの脳領域が個人間の力配分の揺らぎに影響を及ぼすかを検証した実験解析結果を精査し、右の側頭ー頭頂結合部(TPJ)にその座があることを同定した。この結果に基づき、当該年度は右TPJへの経頭蓋電気刺激の適用によってパートナーに対する協調度合を改善し、協調度合の低いペアの協調関係を修飾することが可能か否かを検討した。実験課題は二人組による30秒間の共同力調整課題であり、電気刺激として交流電気刺激(10Hz、1mA)を用いた。パートナーに対する協調度合は、ノイズ寄与率(Noise Contribution Ratio: 以下NCRと略す)によって定量化された。 20名の実験参加者を対象に実験を行った結果、電気刺激によるNCRの修飾には個人差があり、自閉症傾向の程度を表す自閉症スペクトラム指数が大きい参加者ほど、電気刺激によりNCRが大きくなる傾向が示された。このことは、右TPJへの経頭蓋電気刺激によって自閉症傾向の強い参加者の協調度合が改善されうることを意味し、共同課題における最適な協調状態への調整、維持が可能となることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の主な目的は、経頭蓋電気刺激による運動制御の揺らぎの修飾であり、昨年度の進捗によって電気刺激部位の同定がなされた共同課題での適用を優先的に行った。その結果、自閉症傾向の大きい参加者の協調度合を改善することにより、個人間の運動制御における揺らぎを統制・最適化できる可能性が示唆された。この結果は当初の目的に適う内容であり、進捗状況も含めて研究は順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当概年度に得られた個人間運動制御に関する結果をより強固なものとするため、引き続き追加実験を行っていくとともに、その効果の検証を脳波計等を用いて展開する予定である。また、個人内運動制御に関する身体表現ゆらぎの制御に関する実験を進めていく。個人内制御に関しても個人間制御と同様の力調整課題を左右の手を用いて行い、左右間の揺らぎを経頭蓋電気刺激によって修飾・統制することが可能か否かを検証する。
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Research Products
(1 results)