2020 Fiscal Year Annual Research Report
筋骨格モデルを用いた変化球投球時の上肢関節負荷の推定
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18H03150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 知之 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00209503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 義隆 新潟医療福祉大学, 新潟医療福祉大学, 講師 (50549483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スポーツ科学 / スポーツ医学 / 投球障害 / Kinetics |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの投球障害に関する疫学的研究では、変化球の投球で投球障害に陥る確率が高くなることが実証されている。一方、バイオメカニクス的な研究では、むしろ、障害リスクは低い傾向にあるという報告が多い。申請者は、この矛盾は、バイオメカニクス研究において欠落している2つの問題点、すなわち指の運動自体および指がボールに加える接線方向の力を考慮していない点が原因であると考え、その検証を行っている。 これまでの指の運動の計測では、大学野球投手9名を対象に、指のないモデル(以降、従来モデル)と、指を含めたモデル(以降、改良型モデル)について、肘や肩の障害リスクと考えられている変数(肘内反トルク、肩前方剪断力、肩上方剪断力、肩近位牽引力)の比較を行った。その結果、改良型モデルは従来モデルに比べて、肩外旋位付近で生じる最大肘内反トルクにおいて、直球では22%の増加(p < 0.01)、スライダーで29%の増加(p < 0.01)を示した。また、ストライド期に生じる最大肩前方剪断力においては、直球で9%の増加(p < 0.01)、スライダーで11%の増加(p < 0.01)が認められた。ボールリリース付近で生じる肩近位牽引力では、直球では有意な差はみられなかったものの、スライダーでは7%の有意な増加(p < 0.01)がみられた。このように、従来モデルでは、指をモデル化しなかったことにより、障害リスクを過小評価していた可能性が示され、特にその傾向は変化球(スライダー)で顕著であった。 無線力覚センサー埋め込んだセンサーボールを開発・改良し、精度検証を実施した。今回の改良の特徴は、2つのセンサーごと表皮で覆い、縫い合わせたことにあるが、これによって、センサー間の干渉が生じる可能性があった。今回の検証によって、センサー間の干渉は、最小限に抑えられることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度および今年度の新型コロナウィルス蔓延により、投球実験への実験参加者を計画通りに募集できなかったこと、また副次的に、使用予定の施設の利用許可が下りにくくなってしまうなど、実験計画に支障が出たため、遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
使用予定だった施設以外に、研究代表者の研究機関内の実験室に防球、防音対策を施すことにより、手狭ではあるが、何とか実験を行えるように整備した。これにより、実験場所の問題は解決し、新型コロナウィルスの感染対策を十分に施したうえで、積極的に実験を進める。今後、夏頃までには、残りの投球実験を行い、秋以降から3月頃までに分析、論文化を進める。
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