2019 Fiscal Year Annual Research Report
姿勢制御を司る反射系が歩行運動において果たす役割の解明
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18H03167
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西井 淳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00242040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40205737)
大脇 大 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40551908)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歩行制御 / 立位姿勢制御 / 筋シナジー / 感覚運動統合 / CPG |
Outline of Annual Research Achievements |
・綱渡り競技で用いられるバンド状の紐であるスラックラインに足部を置いて体重をかけると,左右方向の揺動を抑えるためと考えられる振戦運動が脚部にしばしば生じる。2019年度は初年度に引き続き,このようなスラックラインタスクと歩行運動における筋活動の計測実験及びデータ解析を行った。その結果,歩行中の立脚期のみならず遊脚相においてもスラックラインタスクの場合と類似する筋活動が検出された。この結果は,立位時に働く姿勢制御が歩行中の姿勢制御のみならず脚運動にも寄与していることを示唆する。 ・姿勢制御がどのような感覚情報に基づいて生じているかを検討していくため,初年度に選定したセンサ等を用い,足底圧分布および身体部位の運動情報を計測するためのセンサシステムを進めた。今年度は,さまざまな圧力の範囲に対応するためのアンプ回路の改良とPCとの無線通信によるデータ送受信システムの改良を行った。さらに,スラックライン上だけでなく,さまざまな環境での歩行データ取得に対応できるよう,IMUセンサを用いた身体部位の加速度,角加速度の同時計測,ならびに,PCとの無線通信を用いたデータ送受信可能なシステムの構築を行なった。 ・姿勢制御に関わる筋活動を推定する新たな計測実験に用いる機器として,立位時の被験者に揺動を与える装置の基本設計を行なった。 ・武術における「垂直離陸」状態での静止立位の身体動揺特性を計測し,通常の静止立位との違いを実験的に検討した.その結果,「垂直離陸」状態では床反力中心速度が増加した(つまり静的安定性は低下した)一方で,DFA解析におけるスケーリング指数は1に近い値を示し動的安定性が向上していることが明らかになった.この結果は,「垂直離陸」が絶えず動くことで広い面での安定化を図ろうとする立位法であることを示すと同時に,素早い動き出しを実現するうえでも有効な立位法であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は歩行中の姿勢制御及び歩容生成に,反射系がいかに寄与しているかを解明することである。これまでに実施した実験結果は,本研究課題により有益な結果が得られそうなことを示唆している。一方で,立位時の被験者に揺動を与える揺動装置および,足圧分布を計測する装置の開発は2019度までに終了することを目標としていた。しかし,揺動装置の開発を行なっている共同研究先において工作室の長期改修があり,また,足圧分布計測に適したセンサが国内で入手困難で取り寄せに時間がかかった等の理由で,開発がやや遅れた。そのため,進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,不安定な足場上での立位姿勢維持タスクにおける感覚情報と筋活性の関係性を手がかりとして,歩行制御に内在する姿勢制御の役割を推定する。今後は,以下のように運動計測実験の準備及び実施を行う。 (1) 姿勢制御や歩行制御における重要な感覚情報の一つである足圧分布および,身体部位の運動情報を計測するためのセンサシステムを完成し,歩行運動の計測,スラックライン上での歩行計測を実施する。筋電位計の計測データとの同期計測環境を構築し,筋電図データをあわせた解析データを取得する. (2) 立位姿勢制御における感覚情報と筋活性の関係を調べるために用いる揺動装置を完成させる。2019年度までに,モータ駆動により足場に揺動を与える装置の基本設計は完了している。2020年度はその完成および,実験に利用するためのチューニングを行う。 (3) (1)(2)で準備した計測機器及び足場を用いて,立位時の姿勢制御における足圧情報と筋活動の関係性を解析する。その結果を,歩行運動中の足圧分布および筋活動データと比較することにより,歩行中の姿勢制御及び歩容生成に,反射系による感覚運動変換がいかに寄与しているかを解明する。
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