2018 Fiscal Year Annual Research Report
ユーザコンテクスト適応型ネットワーク設計・制御手法の確立
Project/Area Number |
18H03236
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 孝典 広島工業大学, 情報学部, 教授 (60539641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 亮吾 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00582199)
松田 崇弘 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50314381)
大田 健紘 日本工業大学, 基幹工学部, 助教 (50511911)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | QoE / ユーザコンテクスト / 生体反応 / ネットワーク設計 / ネットワーク制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ユーザのサービス利用目的・環境や,嗜好・心理状態等のユーザコンテクストに適応する新たなネットワーク設計・制御手法の提案を目指し,(1)ユーザ個々のQoEの定量化手法の確立と,(2)QoE指標に基づいたネットワーク設計・制御手法の構築の2つの研究テーマを進めている. 研究テーマ(1)について2018年度は,ユーザコンテクストを反映したQoE推定モデルの検討を進める計画に対して,QoE推定モデルの参照値を得るための主観評価実験が実施可能な専用ブース(防音室)を整備し,ユーザ個々の知覚品質感度を考慮した映像配信レートの品質設計・制御指針を検討した.また,心拍・血圧等の情報通信サービス利用時のユーザの生理的・心理的反応を考慮することでユーザ個々のQoEの違いを評価可能な新たなQoE指標の検討を進める計画に対し,心拍を主対象として映像ストリーミング配信サービス視聴中の満足度を機械学習により推定する手法を検討した. 研究テーマ(2)について2018年度は,QoE評価指標を想定したネットワーク伝送容量の解析を進める計画に対して,Webのレスポンス時間に対するQoEを考慮した無線LANの伝送容量を評価し,ユーザ毎のQoEを考慮したネットワーク設計・制御方法の有効性について確認した.また,リアルタイムに把握したユーザコンテクスト情報に基づいてQoEを最大化するネットワーク制御法の検討を進める計画に対して,MPEG-DASHによる映像ストリーミング配信サービスを対象に,QoEに基づいた適応ビットレート制御システムのモデル化を行い,ビットレート変動を抑制可能な制御手法の提案と数値シミュレーションによる有効性の確認を進めた.また,QoEフィードバックシステムにも適用可能なトラヒック制御の遅延補償技術についても取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマ(1)では,映像配信サービスを主対象とし,ユーザコンテクストとして知覚品質の感度に影響を与えるユーザ属性として,年齢,性別,通信環境等を考慮する予定であったが,その前段階として,特定の年齢層・性別の中で知覚品質感度の影響評価を実施することが必要となったため,評価モデルの構築はやや遅れている.ユーザの生理的・心理的反応を考慮した新たなQoE評価指標の検討では,当初計画通り,ユーザの心拍情報から利用中のサービスの満足度を推定可能であることを明らかにし,さらに,次年度に向けて皮膚抵抗計測による評価指標の検討にも着手した. 研究テーマ(2)では,無線LANシステムにおいて,Webのレスポンス時間に対するQoEの考慮が伝送容量にどのように影響するのかに関して,当初計画通り,シミュレーション評価によりQoEを考慮することの有効性を検証することができた.また,QoEに基づいた適応ビットレート制御システムのモデル化についても,当初計画通り,QoEを考慮した映像ストリーミング方式としてMPEG-DASHを例にモデル化を進め,QoEを向上させるための制御方式を明らかにした.さらに,次年度の各種制御理論の適用・評価に向けて,遅延補償技術の検討にも着手した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究テーマ(1)では,ユーザ個々の品質感度に加え,年齢,性別,通信環境等のユーザ属性による品質感度の違いを定量化するため,映像配信サービスを対象に,主に配信レートやその変動,再生停止等に対するQoE評価特性をユーザ属性毎に解明し,QoE評価特性のモデル化を目指す.また,心拍に加えて皮膚抵抗や脳波等の生体信号を活用し,サービスに対する満足度/集中度/興味度を推定する手法について検討し,これらの推定結果を基に配信レートやその変動,再生停止等に対するQoE評価特性を解明していく. 研究テーマ(2)では,IEEE 802.11e無線LANプロトコル等のネットワーク制御手法を拡張することにより,QoEに基づくネットワーク制御手法を提案し,その有効性を評価していく.また,2018年度に提案した制御手法のシミュレーション環境をネットワークシミュレータ上に実装するとともに,遅延やパケット損失等のネットワークQoSを考慮したネットワーク制御手法の確立を目指す.さらに,QoE情報のリアルタイムフィードバックを実現可能なシステム構成や制御方式についても検討していく.
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