2020 Fiscal Year Annual Research Report
周辺視野の知覚特性を利用した広角視覚像の効率的な生成及び転送手法に関する研究
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18H03247
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 豪 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (00323832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内川 惠二 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00158776)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 周辺視 / コントラスト感度関数 / 視覚画像フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
中心視から周辺視へと移るに従ってコントラスト知覚感度は低下する。このことは広く知られているが、視角30度を超えた偏角でのコントラスト感度特性について計測した実験は従来ほぼ無かった。本研究では、周辺視界でのコントラスト感度特性を計測し、工学的に利用可能な視界全域でのコントラスト感度特性をモデル化することを目指している。現在までに、周辺視でのコントラスト感度特性を計測する暗室を構築し、それを用いた視界耳側方向への偏角84度までと、上側方向49度までの輝度コントラスト感度特性の計測を行った。偏角30度程度までの周辺視の計測データに基づいた従来の周辺視コントラスト感度関数のモデルでは、偏角が大きくなると実際の視覚特性とのずれが大きくなることが本研究で得られたデータにより明らかとなった。 またコントラスト感度関数による知覚コントラスト閾値を利用した視界画像フィルタを実現するための画像処理法に関しての研究も並行して行った。入力画像に対して、位置と周波数のどちらも高精細に分解して処理をすることが望ましいが理論的に限界がある。またデジタル画像フィルタは有限区間離散関数として実装することが必須である。さらに視界画像フィルタとしては周波数分解後複合する必要がある。これらの制約条件を考慮し、知覚コントラスト閾値と局所コントラストの比較にはガボールフィルタを用い、周波数分解複合用にはエルミート変換中の2階ガウス微分をフィルタとして用いる複合処理による視界画像フィルタを考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中心視付近におけるコントラスト感度の知覚閾値について、実験環境の継続的校正を行い周辺視のコントラスト感度閾値の計測データを蓄積している。コロナ禍において計測実験が計画通り実施できない点はあるが、新たに得られたコントラスト感度閾値のデータからは従来提案されてきた周辺視野におけるコントラスト感度関数モデルでは偏角の大きな場合に乖離がみられることを明らかとした。このことから貴重な計測データを得ることができたと考えている。 コントラスト感度関数を三次元的にグラフ化する試みは従来見られず、本研究で作られたグラフから、周辺視へ向かうにつれて、感度の低下には一度停滞がみられることが示せた。これは、コントラスト感度関数のモデル化には重要な知見である。 コントラスト感度関数に基づいた画像フィルタについてのフィルタ設計法については周波数空間での理論的構築を行い、離散画像へ適用するための具体的な実装から、テストチャート画像に対する評価では従来法よりも優れたコントラスト知覚未満の刺激を適切に除く特性を持つことまで確認できた。 以上より、概ね順調に成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
任意視角のコントラスト感度関数モデル関数を提案するために必要な上下左右の広範の周辺視界のコントラスト知覚閾値を計測する。そのための暗室環境の改修整備、刺激提示装置の性能維持を継続して行う。 計測済みの視界耳側、視界上方の様々な偏角でのコントラスト感度閾値に対して適用したコントラスト感度閾値、空間周波数、偏角の3変数のコントラスト感度関数モデルの他偏角方向への適用について評価検討する。 最終的に視界上下左右の偏角を連続的に扱うコントラスト感度関数モデルの提案を行う。コントラスト感度関数モデルを応用した視界画像フィルタについての評価を行う。
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