2018 Fiscal Year Annual Research Report
On the stability of boundary integral methods in wave problems
Project/Area Number |
18H03251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 直志 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90127118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 徹 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90360578)
新納 和樹 京都大学, 情報学研究科, 助教 (10728182)
吉川 仁 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90359836)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 波動問題 / 時間域境界積分法 / 安定性 / 櫻井杉浦法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,2次元円形領域において波動方程式の時間域境界積分法による解法の安定性について研究を行った.まず,時間域の境界積分法の安定性の問題を周波数域の手法を使って非線形固有値問題に帰着させる方法を考案し,櫻井杉浦法を用いた数値計算手法を開発した.この手法を2次元円形境界上の種々のポテンシャルからなる積分方程式に適用し,時間方向に線形補間を用いたときに数値計算が安定であるようなポテンシャルを特定した.これらを用いて外部Dirichlet問題の数値計算を行い,理論の予測と時間域の数値結果が一致することを確かめた.また得られた安定性解析は,数値解の精度など,安定性以外の特性の理解にも有効であることを示した. 次に,得られた安定性解析手法を円形領域の内外におけるtransmission問題に適用した.まず,従来から知られているtransmission問題の積分方程式を修正して,別途特定した「安定なポテンシャル」のみを用いる形に変形した.時間域の数値計算の結果,周波数域において実数の見かけの固有値を持たない積分方程式でも時間域では不安定なものが存在すること,「安定なポテンシャル」を用いて修正した積分方程式を用いると安定な数値計算が可能であること,これらの結果は提案する安定性解析の結果と一致することなどが分かった.さらに円形領域以外でも修正した時間域積分方程式は安定な数値結果を与えることを示した. 以上の検討では時間方向のみの半離散化を施した簡略化した安定性解析を用いたが,これを正当化するために空間方向の離散化の影響を検討した.その結果,数値実験で使用した程度の空間方向の離散化においては,空間方向を連続量とみなす安定性解析が有効であることが分かった. 最後に同様な検討を2次元弾性体,および3次元波動方程式に対して行い,概ね類似の結果を得た.また,補間法に基づく高速解法の検討も開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,ほぼ当初の研究計画を実行する事ができ,余裕があれば検討するとしたtransmission問題も扱うことができた.さらに,これらの成果をまとめた論文を作成,投稿し,現在軽微な修正を行った原稿の査読中である.また,同論文のpreprintはarXivに掲載済みである.加えて,2年目以後の課題と考えていた弾性体や3次元問題の研究にも着手することができた.以上の成果は当初の予定をはるかに越えて進展していると評価する事ができる. 一方,研究成果として,時間方向に離散化された方程式の特性根は,連続系の固有値から予想以上に離れており,摂動と呼べる範囲を越えている事が分かった.また,円形領域のような単純な場合でも,特性根が安定側に移動するか否かの判定を行うためには,今のところ櫻井杉浦法等によって数値計算を行う以外に方法がない.このことは,時間域の境界積分法の安定性のメカニズムが当初思い描いていたシナリオよりも複雑であることを意味している.さらに,櫻井杉浦法を用いた特性根の数値計算において,非常に多数の固有値が求れられ,その信頼性の検討が重要な課題であることが判明した. 以上の事を勘案して(2)おおむね順調に進展しているとの判断とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,2次元波動方程式において,提案する周波数域の安定性解析を任意の境界形状の場合に適用し,その妥当性を検証する必要がある.そこで,任意形状の境界の場合に時間方向に離散化した積分方程式の特性根を求めるプログラムを櫻井杉浦法を用いて開発する事を検討する.そのためにはまず無限級数で書ける特性方程式の積分核を高速計算する方法を確立する必要があり,種々の加速法の適用を検討している.研究対象は外部問題を中心としつつtransmission 問題も考慮する.特に,積分方程式や内外の材料定数,時間方向の基底関数などの選択によって安定性の判定にどのような影響があるか,系統的な数値実験を行って検討する予定である.同様な研究は弾性体に対しても行う. 次に,安定性の検討を3次元波動方程式に拡張し,提案する周波数域の安定性解析と,従来から行われている時間域の安定性解析に櫻井杉浦法を用いた方法を比較検討して,周波数域の安定性解析の精度や効率について研究する.併せて櫻井杉浦法における固有値の信頼性指標の有用性を調べる. さらに,これらの検討によって,理論的に安定性が保証された定式化について高速解法(補間法及び ACA 法)と時空法のそれぞれの実装を行い,性能評価を行う. さらに余裕があれば,2次元円形領域の場合について,時間方向の基底関数の選択が特性根の虚部の符号にどのような影響を及ぼすか,理論的な検討をおこなう. なお,当初は2年目からMaxwell方程式についても検討を開始する計画であったが,現在,選点法を用いたMaxwell方程式の境界積分法の研究を別途進めており,Maxwell方程式の時間域解法の研究はこの研究の終了を待って実施することとする.
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Research Products
(6 results)