2019 Fiscal Year Annual Research Report
光受容タンパク質を用いた単純細胞受容野型フィルター素子の作製と画像処理
Project/Area Number |
18H03258
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岡田 佳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50231212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70180586)
高橋 裕樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80262286)
笠井 克幸 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (90359084)
長谷川 裕之 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10399537)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バクテリオロドプシン / 受容野 / 単純型細胞 / 画像フィルター / Gaborフィルター / 第一視覚野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,光受容タンパク質の視覚機能をデバイスレベルで取り入れた視覚受容野型の画像フィルターを作製し,アナログ画像処理に適用することを目的とする. 脳の第一視覚野に存在する単純細胞受容野形状を3次元的に模倣した「グレースケール(多値化)画像フィルター」を実現するため,タンパク質懸濁液をバイオナノインクとしてインクジェット印刷し,膜厚分布を制御した.タンパク質懸濁液濃度,濾過フィルターのメッシュサイズ,プリンターの吐出条件(吐出周波数,液滴間隔)を検討し,最適化した.1pLと10pLプリントヘッドノズルを比較したところ,タンパク質膜厚制御には1pLが適しており,印刷回数11回まで膜厚は線形に増加した.この積層印刷膜を用いて作製した湿式光セルのピーク出力は7層膜のときに最大となった.この結果より,Gabor関数の興奮領域ピーク強度を7値に分けた3ローブon中心cos型「7値化」フィルターを設計した.中心興奮領域と周辺抑制領域の画像データをそれぞれプリンターに入力して,2枚のITOガラス基板にインクジェット印刷した.対向させた基板間に電解質溶液を封入したフィルター素子を試作し,様々な空間周波数をもつグレーティングをプロジェクターで走査して,応答特性を測定した.ディップコート成膜法を用いたon中心cos型「2値化」フィルターの空間周波数特性と比較したところ,2値化で見られた矩形エッジによる第2ピークが消失し,インクジェット成膜法による「7値化」フィルターの優位性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マテリアルインクジェットプリンターによってタンパク質ナノインクを積層印刷したスクエアパターン薄膜を用いて光セルを組み立てたところ,その光電流ピーク出力は,従来のディップコート成膜方法による光セルと概ね同等の結果が得られている.また7層で出力が最大になることから,3ローブのon中心cos型「7値化」フィルターを設計,試作した.「7値化」フィルターの空間周波数特性は,予想通り,ディップコート成膜法による「2値化」フィルターの特性よりも理論値に近い結果が得られた.これらの基礎データを基に,ローブ数の増加,off中心cos型,sin型へと,設計・試作を進めることができるため,概ね予定通りの進捗状況と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は上記印刷条件と,光セルの出力が最大になる最適印刷層数「7層」条件を基に,多ローブのon中心cos型とsin型の「7値化」フィルター素子を設計・試作する.その際,従来の成膜方法であるディップコート法を用いて作製した「2値化」フィルターの時空間周波数特性と比較するため,「7値化」の設計には,「2値化」の感度と帯域幅が最適となるパラメーター(σ= 5, γ=1, λ=10, φ=0(cos 型), π/2(sin 型) )を採用する.on(off)中心cos型は中心の興奮(抑制)領域の感度を7値に分け,sin型は興奮領域と抑制領域の感度をそれぞれ7値に分ける.さらに計算機シミュレーションによって,興奮領域/抑制領域数である「ローブ数」を最適化し,領域間で1値あたりの感度が一定となるように各ローブ領域の多値化数を算出する.このシミュレーションパターンを1値ごとに断層パターンとしてプリンターに入力,ITO透明電極上に印刷して種々の「7値化」フィルターを作製する. 高輝度液晶プロジェクターとプレゼンテーションソフトを用いて,光エッジ,光バーなど様々な空間周波数とコントラストをもつ正弦波/矩形波グレーティング画像を静的に明滅,または動的に走査して,これまで検討してきた空間周波数特性だけでなく時間周波数応答特性を測定し,グレースケールフィルター素子が視覚受容野を3次元的に模倣していることを示す.
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