2018 Fiscal Year Annual Research Report
新奇性に対する感情の数理モデル開発(情報量が覚醒度と快感情に与える影響の解明)
Project/Area Number |
18H03318
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 秀吉 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20396782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 一貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10403594)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感情 / 情報理論 / 新奇性 / 数理モデル / ベイズ / 期待効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,新奇性に対する感情の数理モデルを開発することである.本年度の実績は下記の3点である. 新奇事象に対する感情の覚醒度計算モデルの開発: ベイズ理論と情報理論を用いて,感情の覚醒度(驚き)を数理的にモデル化した.すなわち,ベイズ理論における事前分布と事後分布の間の分布間距離(KL情報量)を覚醒度の指標とした.正規分布を仮定することにより,覚醒度を,予測誤差,不確実性,外乱の3つのパラメータの関数として定式化した, 覚醒度の数値シミュレーション: 予測誤差,不確実性,外乱をパラメータとして操作した際の情報利得について,計算機による数値シミュレーションを行った.その結果,不確実性と予測誤差の交互作用を発見した.すなわち,予測誤差が小さい場合は,不確実性が大きいほど覚醒度が高いが,予測誤差が大きい場合は,不確実性が小さい方が覚醒度が高いことを示した(Arousal crossover effect:ACE). 打楽器を用いた覚醒度モデルの検証実験: モデルシミュレーションから予測したACEを,打楽器を用いた被験者実験により検証した.打楽器を、見て、打って、聞くという状態遷移を想定し,見た目で予想した音と実際の音とのずれを予測誤差として用いた.また,楽器の典型性を用いて,不確実性を操作した.被験者の反応として,脳波(事象関連電位P300)と主観(驚きの度合い)を取得した.その結果,シミュレーションが示したACEを,脳波,主観共に確認することができた.これにより,本モデルの妥当性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書通りに研究が進展している.また,研究の成果は,2018年度内に学術誌論文および国際会議,国内会議で発表している.
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Strategy for Future Research Activity |
新奇事象に対する感情の感情価計算モデルの開発: 昨年度の研究で,新奇な事象から獲得する情報利得を用いて感情の覚醒度がモデル化できることが明らかとなった.本年度は,情報利得であらわされる覚醒度が,快-不快をあらわす感情価に与える影響を数理的にモデル化する.方法として,Berlyneの覚醒ポテンシャル説を参考に,報酬系と嫌悪系(aversion)を覚醒度の関数で表し,それらの足し合わせにより感情価をモデル化する.
予測誤差,不確実性,外乱が覚醒度と感情価に与える影響の解明: 覚醒度および感情価の数理モデルを用いて,予測誤差,不確実性,外乱が感情に与える影響を数値シミュレーションにより詳細に調べる.シミュレーション結果を予測として,被験者実験により検証する.検証材料として,音楽の和声ルールからの逸脱を予測誤差として操作する系を検討する.さらに,不確実性として,音楽に対する知識・経験量を操作変数として用いることを検討する.
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Research Products
(6 results)