2018 Fiscal Year Annual Research Report
Structural changes of hetero-oligomers in the Protein Data Bank
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18H03331
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 元規 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (40290895)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 立体構造 / 構造比較 / 構造機能相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質のヘテロ複合体の多くは過渡的でアロステリーとも関連し,生理活性を高度に制御調節する.タンパク質の構造変化と機能発現は密接に関係しているので,ヘテロ複合体の構造変化には,その独特な機能発現機構を解く鍵が潜んでいる.本研究ではPDBに格納された全ヘテロ複合体を対象に立体構造比較を行い,構造変化を大規模,系統的に解析して運動を分類し,俯瞰する.この時,申請者らが開発した,複合体の構造比較法:SCPCと,立体構造変化の同定・記述法:Motion Treeを利用する.得られたデータからヘテロ複合体特有の構造変化を同定し,生物学的機能と立体構造変化との相関(因果関係)を考察する.本研究ではPDB中の全ヘテロ複合体について大規模な構造比較を行い,構造変化を分類する.どのような構造変化が見られるのかをファミリー横断的に調査する.過渡的複合体が行う制御調節やアロステリーなどと関連するヘテロ複合体固有の運動を抽出し,複合体やサブユニット,相互作用面の立体構造の特徴や分子機能との関係性を明らかとし,その生物学的意義を考察する.結果は公共データとしてインターネットを通じて公開する.計画は大きく4段階からなる.平成30年度は第1段階としてヘテロ複合体の対を求める作業を行い,ヘテロ複合体のデータを収集した.その他に,2.構造変化を計算し,データ化する,3.データを解析,分類し,機能との関連を調査する,4.データベースを作成し,データを公開する,という工程を実施する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ複合体データを複合体データベース:QSbioや,複合体のアセスメント結果を提供するPDBe PISAを利用して取得しようと試みたが,それぞれ問題点があることがわかり,これらの方法には依らないこととした.3番目の方法として,Uniprotに記載されているPDB情報を利用し,ヘテロ複合体のデータを抽出した.Uniprotのそれぞれのエントリーにはアミノ酸配列のどの部分の構造が決定されたのかがPDBコードと供に掲載されている.これのリストを作成し,エントリ全体を3分類した.1) 1つのPDBエントリに対し1つのUniprotエントリが対応するもの→モノマーかホモオリゴマ.これ以外のものがヘテロオリゴマになるが,2) 1つのPDBチェインに対しUniprotエントリが複数あるもの→キメラ.となるので扱いが難しくなる.残りが 3) 扱いやすいヘテロオリゴマ.となる.Uniprotに記載されているPDBについての統計は,1) 119,108エントリ,2) 2,322エントリ,3) 17,464エントリとなった.2)は扱いにくいので,3)で十分な解析ができないと判断した時に利用することとし,当面は扱わないこととした.一方,PDBのmmCIFフォーマットには,PDBより提供されているBiological Unitについてのアノテーション結果が記載されている.これを解析して,author_and_software_defined_assemblyと記載されているものを82,480個抽出した.これと3)のデータのアンドをとり,16,653個のPDBのBiological Unitを得た.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は第2段階として,収集したデータに基づきヘテロ複合体の運動について計算と解析を開始する.昨年度は信頼できるヘテロ複合体のBiological Unitを得ることができた.まずこれらから構造変化研究の対象となる構造対を作成する.求めた複合体の構造対についてSCPCを適用し,結合モードが一致する構造対を選定する.結合モードを一致させるのは,クリスタルコンタクトなどによって発生する疑似的なサブユニット配置ではない,生体内で発生している構造変化を同定するためである.選定された複合体対についてMotion Treeを利用して構造変化を同定する.可能であればリガンド結合部位,翻訳後修飾部位も同定し,何に起因する運動なのかも調査する.昨年度にヘテロ複合体のデータは収集したが,それらは二量体構造から高次のオリゴマーまでを含んでいる.なるべく簡単な二量体構造から解析を開始する予定であるが,面白そうな構造変化はより高次のオリゴマーで発生しているかもしれない.構造変化のデータを取り終えた後に様子をみて,研究の順番を検討したい.
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Remarks |
太田元規,福地佐斗志,「天然変性タンパク質の作用機序と相分離」,第1回LLPS研究会 (2018) 太田元規,「Domain Dislocatonから20年:相同タンパク質に見られる立体構造変化」,遺伝研研究会「生命情報データの拡大と分子進化研究の進展」 (2018)
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