2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the material cycle and environmental restoration in the inner area of Ariake Sea
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18H03360
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
速水 祐一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00335887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高巣 裕之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 助教 (00774803)
藤井 直紀 佐賀大学, 農学部, 特任助教 (10403859)
小森田 智大 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (10554470)
山口 創一 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (20457493)
田井 明 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20585921)
梅澤 有 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50442538)
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (70292860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋環境 / 物質循環 / 環境再生 / 有明海 / 富栄養化 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏季と冬季のそれぞれ約2ヶ月間、諫早湾湾口部の4点において超音波ドップラー多層流速計(ADCP)等を設置して連続観測を行った。また、8月には1大潮小潮周期にわたって集中的な物質循環調査を実施した。 ADCPによる連続観測の結果をこれまでのモニタリング結果と比較すると、冬季にはM2潮流流速が月昇交点運動の影響を受けて変化していることが確認された。物質循環調査では、1大潮小潮周期の間に6回の船舶観測を行った。船舶観測では物理観測に加えて微小従属栄養生物調査、懸濁態安定同位体比の調査を行った。また、底上1mの海水を採取して酸素消費実験を行った。観測の結果、大潮から小潮にかけて沖合からの低温・高塩分水進入による成層強化と、それにともなった貧酸素水塊の形成が確認された。底層水の酸素消費は、小潮の貧酸素水塊形成時に減少し、大潮時に大きかった。これは、貧酸素水塊の形成が酸素消費の増大によるものではなく、物理的な成層強化によるものであることを示す。底層の全バクテリア数は貧酸素水塊の発達にともなって増加していた。一方で、従属栄養鞭毛虫は貧酸素水塊の発達時には減少していた。底層水についてホルマリンとクロラムフェニコールを添加した酸素消費実験を、大潮時と小潮時に各1回行った。その結果、小潮時には全酸素消費の約80%がバクテリアの呼吸であったが、大潮時にはほとんどがバクテリア以外の生物の呼吸であった。化学的酸素消費の寄与は両日ともほとんどみられなかった。酸素消費速度とクロロフィルaの間には高い正の相関が見られた。これは、大潮時の高い酸素消費が主に植物プランクトンの呼吸によることを示唆する。今回の観測時にはシャットネラ赤潮が継続して発生しており、その影響を受けたものと考えられる。一方で、貧酸素水塊発達期である小潮時には酸素消費の主体はバクテリアであり、植物プランクトンの呼吸の寄与は小さいと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、中長期連続モニタリングとそのデータ解析、有明海奥部における物質循環調査、数値モデルを組み合わせて研究を行う。中長期モニタリングとしては、諫早湾湾口部の4点の観測櫓付近の海底に超音波ドップラー多層流速計(ADCP)等を設置し、夏と冬に2ヶ月ずつ連続観測した。物質循環調査としては、は夏季に2週間(大潮小潮周期)にわたって船舶を用いた集中観測を実施した。数値モデルとしては、貧酸素水塊を再現できる有明海の3次元生態系シミュレーションモデルの開発を進めた。当初の計画では、物質循環調査を冬季にも行い、季節的な比較をする予定であった。しかし、研究代表者の体調不良により実施できなかった。そこで、本研究課題の進捗状況についてはやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、中長期連続モニタリングとそのデータ解析、有明海奥部における物質循環調査、数値モデルを組み合わせて研究を行う。中長期モニタリングとしては、諫早湾湾口部の4点の観測櫓付近の海底に超音波ドップラー多層流速計(ADCP)等を設置し、夏と冬に2ヶ月ずつ連続観測する。また、6月から毎月1回小潮時に物質循環調査を実施する。調査では、有明海奥部の10点で水質・光量子量の鉛直分布を測定すると共に層別採水を行う。試水について、クロロフィルa・栄養塩濃度、バクテリア・従属栄養鞭毛虫(HNF)・繊毛虫密度、その他動物プランクトン密度、懸濁態有機物の炭素窒素安定同位体比等を測定する。数値モデルとしては、3次元生態系シミュレーションモデルにより、有明海の低次生態系の季節変動を再現する。さらに、生態系レジームシフトの検討をするためのボックスモデル型の生態系モデルを開発する。
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