2018 Fiscal Year Annual Research Report
Formation and repair mechanisms of radiation-induced DNA-protein cross-links
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18H03374
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井出 博 広島大学, 理学研究科, 教授 (30223126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 亮一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, 主任研究員(定常) (90435701)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA損傷 / 修復機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線が誘発するDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)は,生成の絶対量や修復動態が分かっていないため,他の損傷に比べ放射線誘発損傷としての位置づけが明確ではない。研究代表者は,最近の研究でX線によるDPC生成量が塩基損傷やDNA一本鎖切断に匹敵することを示した。さらに,隣接する鎖切断の違いにより三つのタイプのDPC(Type 1~Type 3)が生成することを明らかにした。本研究では,これら三つのタイプのD PCの生成機構および修復を調べ,DNA二本鎖切断に次ぐ第二の主要放射線誘発致死損傷としてのDPCの位置づけを明らかにする。 DPC生成機構:放射線が誘発するラジカルの非特異的な再結合(非特異的反応)により生成するType 1 DPCを検討した。X線照射した細胞から精製したDNAをDNase Iで消化し,SDS-PAGEで分離後,特異的抗体を用いたWestern blotによりタンパク質の有無を調べた。その結果,DNAに結合しヌクレオソーム構造を形成しているコアヒストン(H2A,H2B,H3,H4)およびリンカーヒストン(H1)がDPCに含まれることを明らかにした。 DPC修復機構:DPC特異的プロテアーゼとして,哺乳類ではWss1ホモログ(SPARTAN)が示唆されているが,SPARTAN欠損細胞のX線感受性や放射線誘発DPCの修復は調べられていない。修復野生型(WT)細胞およびSPARTAN-knockout(KO)細胞をX線照射し,生存率を調べた。KO細胞はWT細胞と同程度の生存率を示した。放射線誘発および他の化学的DPC誘発剤を含め,更なる修復機構の検討が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線が誘発するDPC生成に関してとして,ラジカルの非特異的な再結合(非特異的反応)により生成するType 1 DPCにコアヒストン とリンカーヒストンが含まれることを明らかにできた。また,DPC修復については,DPC特異的プロテアーゼとして,哺乳類ではWss1ホモログ(SPARTAN)が示唆されているが,放射線が誘発するDPC修復については,他のDPCプロテアーゼの関与およびプロテアーゼ非依存的な機構を示唆する結果が得られた。初年度に予定していた実験に概ね着手し成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線によるDPC生成機構については,Type 1 DPCに含まれるタンパク質の同定をさらに行う必要があることから,Western blotおよび質量分析等による同定を継続して行う。Type 2 DPCおよびType 3 DPCでは特定のDNA代謝酵素(Top 1・Top 2)がトラップされる。したがって,これらのDPC生成には特異的な機構があると予想される。Top 1およびTop 2は,酵素が作用するDNA近傍に損傷が存在すると,反応中間体がトラップされDPCを形成する。これを作業仮説として,Top 1およびTop 2(および新規に同定された酵素)の反応中間体をトラップする放射線誘発DNA損傷を明らかにする。 DPC修復機構については,Top 1・Top 2を含むDPCの修復に,TDP1,TDP2が関与する可能性がある。そこで,修復野生型(WT)細胞およびTDP1-knockout(KO)およびTDP2-KO細胞を,X線(Type 1~Type 3 DPC誘発),ホルムアルデヒド(Type 1),カンプトテシン(Type 2),エトポシド(Type 3)で処理し,誘発されたDPCの修復動態をWestern blotで調べる。また,照射線量・処理濃度を変え,WT細胞とKO細胞の生存率を比較する。SPARTAN- KO細胞についても同様に検討する。細胞のDPC修復動態と生存率の差違から,DPC修復に対するTDP1,TDP2関与の有無を明らかにする。
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Research Products
(5 results)