2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms underlying the formation of bioorganometallic bond for metal toxicology
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18H03380
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小椋 康光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (40292677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 紀行 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (10376379)
福本 泰典 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (10447310)
田中 佑樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (50824041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セレン / テルル / ヒ素 / メチルトランスフェラーゼ / ICP-MS / スペシエーション / 水銀 / 脱メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境から生体に曝露される金属元素の毒性は、その化学形に著しく依存している。すなわち、無機イオンと共有結合を持つ有機金属化合物では毒性が著しく異なることが知られている。また金属の種類によって、アルキル化されることにより毒性が低減する元素もあれば、脱アルキル化により毒性が低減する元素もある。しかし、特定の金属元素が生体内でアルキル化代謝を受けることや有機金属化合物が脱アルキル化されることは知られていたが、その分子機構の詳細は、ごく一部の金属のメチル化以外は未だ明らかになっていない。この理由の一つは、(脱)アルキル化制御の分子機構を解析するために必要な生体内の有機金属化合物の分析法が確立されていないことが挙げられる。本研究では、生体内有機金属化合物の新規分析法を構築し、包括的に金属元素の(脱)アルキル化制御の分子基盤を解明することにより、有機金属化合物の毒性発現機構及び解毒機構を解明し、産業上の有用な金属元素のリスク回避と健康の維持をアウトカムとした予防薬学的研究を実施することを目的としている。 本研究では、上述の目的を達成するために、分子細胞生物学的な手法のみに留まらず、化学的には全く性質の異なる無機態及び有機態の金属元素を、定性的かつ定量的に分析可能な手法を構築し、それを活用して、生体が行っているアルキル化/脱アルキル化の分子機構を解明しようとするものである。特に高速液体クロマトグラフィー及び誘導結合プラズマ質量分析計を利用したLC-ICP-MSにより、金属の代謝物を一括定量できる方法を活用し、問題解決を果たす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでにセレンの3段階のメチル化は、単一のメチル化酵素により進行するのではなく、2種類の異なる分子種のメチル基転移酵素が関与するという当初の予想を超えた進展が得られた。さらに、類金属元素のメチル化は、元素ごとに特異的であるのではなく、元素周期表の族ごとに特異的に進行していることを明らかにしつつある。 脱メチル化に関しては、細菌で見いだされるメチル水銀の脱メチル化酵素と相同性の高い遺伝子を、動物のゲノムで検索したところ、相当するものは見つからなかった。しかしin vivoでは確実に脱メチル化が進行しているため、動物細胞内に脱メチル化酵素を見出すため、引き続き検討を行った。この検討に併せて、無機態および有機態(メチル化体)の水銀を簡潔に分別定量するための分析法の構築を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和2年度は、これまでの成果を受けて以下の項目を実施予定である。(1)セレンのもう一つの排泄形であるセレン糖もやはりメチル化を受けているが、このセレン糖のメチル化を担う酵素を特定する。(2)セレンと同族のテルルについても同様のメチル化酵素によりメチル化を受けるか、明らかにする。(3)水銀の脱メチル化において、腸内細菌叢が関与するかを定性的のみならず、定量的にも評価を行う。 上述の項目の実施にあたっては、技術的にはこれまで同様の手法で達成可能であるため、特に問題となる点は想定できない。今後COVID-19の影響により、ロックダウン等の研究を計画通りに遂行できないような対応がとられた場合、上述の(1)、(2)、(3)の順番で研究期間内に可能限り、研究を進行させる。 令和2年度には生体金属に関する3研究会の合同年会を、代表者が主催するため、研究成果の効果的な公表の場として活用する予定である。また令和2年度に、ひらめき☆ときめきサイエンスにも採択されたため、本研究成果のアウトリーチ活動として、学童を対象とした研究成果の社会還元にも努める。
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Research Products
(21 results)