2018 Fiscal Year Annual Research Report
Bioaerosols transported from forest area and their impacts on climate changes
Project/Area Number |
18H03385
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
牧 輝弥 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70345601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 康人 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 特命研究員 (90343897)
渡辺 幸一 富山県立大学, 工学部, 教授 (70352789)
當房 豊 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60572766)
石塚 正秀 香川大学, 創造工学部, 准教授 (50324992)
北 和之 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (30221914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオエアロゾル / 気候変動 / 雲形成 / 真菌 / 細菌 / 森林 / 氷核活性微生物 / 大気浮遊微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷雲の形成を促す「氷晶核(氷核活性を持つ粒子)」の発生源は不明であり,その粒子密度は気候変動予測での不確定因子となる。その為,近年,分析・観測技術の向上に伴い検出可能となった大気浮遊微生物(バイオエアロゾル)の氷核活性へ学術的関心が集まっている。申請者らは,長年の飛行機観測などで,高度数千mの粒子から氷核活性を持つ微生物を検出しており,その種類から森林由来であると推察してきた。しかし,微生物の森林からの放出量は定かでなく,氷晶核の主要発生源とは断定できない。そこで,本研究では,観測機器を完備した森林観測サイトでの地上観測に,微生物捕集に特化した高高度大気観測を併用することで,森林地表から高高度までの浮遊微生物の鉛直分布を明かとし,氷核活性微生物の森林からの放出量を追究しつつある。 2018年度は,森林バイオエアロゾルの捕集する観測調査を,筑波実験植物園と福島県波江において実施した。大気微生物が増える時期(6月と10月)には,植物園では,ヘリコプターと建物屋上を利用し,それぞれ高度500mと10m(樹冠)で大気粒子を捕集し,糸状の真菌が樹冠上まで浮遊し垂直分布していることを突き止めた。また,大気粒子試料から,糸状を形成する真菌が10種程度分離培養され,複数種のカビやキノコの胞子が樹冠外に放出されていることにあたりをつけた。一方,大気粒子から微生物のゲノムDNA直接抽出し(培養を経ない),解析した結果,分離培養された菌以外にも数百種以上の細菌と真菌が,森林内外に浮遊していることが分かった。 こうした風送微生物に関する研究成果への学術的評価は高く,大気科学雑誌JGRに論文発表され,その論文がForbesのサイトにてニュースとして取りあげられた。また,一般市民からの注目も熱く,牧代表が密着取材をうけ,森林観測全般をサイエンスゼロ(Eテレ)にて30分番組にとして放送された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
森林バイオエアロゾルの捕集調査:2018年4月から2019年3月にかけて,森林地帯に隣接した観測サイト(茨城県筑波実験植物園と福島県波江)において,地面上(高さ3m)において大気粒子を長期的に採取する観測調査を実施した。平行して,大気微生物が増える時期(6月と10月)には,筑波実験植物園において,ヘリコプターと建物屋上を利用し,それぞれ高度500mと10m(樹上)で大気粒子を捕集するとともに,係留気球によって高度100mまでの浮遊する大気粒子の垂直分布を測定した。いずれも,大気粒子はフィルター上に吸引捕集し,大気観測機器によって,粒子の垂直混合の指標となる環境データ(粒子密度,地表面水分,温湿度,風速等)も順調に計測した。 培養を経ない微生物ゲノム解析:大気粒子試料から直接抽出したゲノムDNAに含まれるrRNA遺伝子とITS領域(細菌・カビに普遍的に存在し種の指標となる)の遺伝子情報を,超並列シーケンサー(MiSeq)によって解読した。遺伝子情報をバイオインフォマティクスによって系統分類学的に解析し,森林内外を浮遊する微生物群は数百種以上で構成され,カビとキノコ類が優占して浮遊していることが明らかになった。 微生物の集積培養:大気粒子試料中の微生物を,寒天平板法および希釈培養法(液体培地)を用いて,培養し,分離株を得た。環境ゲノムから判った種組成情報をもとに,真菌用のポテトデキストロース培地で多くの微生物を分離できることが分かった。分離株のrRNA遺伝子とITS領域を解読し,種を同定したところ,10種以上の真菌と細菌で構成されていた。 分離株の氷核活性の評価:小滴凍結法と氷核活性計測定を使って,真菌株の氷核活性を検証したところ,-13度程度から氷を形成する菌株を確認できた。従って,森林から氷核活性細菌を分離培養できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に引き続き,森林地帯に隣接した観測サイト(茨城県筑波実験植物園と福島県波江)において,地面上(高さ3m)にける大気観測調査を継続する。また,平行して,大気微生物が増える時期(6月と10月)には,筑波実験植物園において,ヘリコプターと建物屋上を利用した観測を実施し,森林内外の垂直分布解明の手がかりとなる観測データと試料を集積する。 拡充された大気試料を使って,「培養を経ない微生物ゲノム解析」を継続して実施する。また,既に解析済みの微生物群集構造データを,環境因子と比較することで,微生物群集の鉛直分布および時系列変化を理解し,「森林から放出(鉛直混合)される微生物群」を特定する。種組成解析を主体とした群集構造解析に加え,全ゲノム解析も重点化し,試料に含まれる氷核活性に関わる遺伝子の情報も集める。 「微生物の集積培養」も推し進め,分離株のストックを増やす。分離株のrRNA遺伝子とITS領域を解読し,種を同定するとともに,氷核活性を小滴凍結法と氷核活性計によって検証する。 強い活性の分離株を,活性の雲生成チェンバー実験に使い,実大気に近似した気象条件下(現場に近い断熱膨張過程)で大気粒子化し,雲形成過程を確める。 「氷核活性微生物種の動態・分布調査」を本格化させる。「微生物群集の鉛直分布」と「氷核活性の評価」をもとに,森林から放出され氷核活性を持つ微生物の種(キーストーン種)を選定する。キーストーン種に特異的な核酸(プローブとプライマー)を合成した後,核酸プローブを使い,蛍光顕微鏡下で試料中の特定種を識別する検出系(FISH法)を構築するとともに,核酸プライマーを用いて,微生物一細胞から計数できる遺伝子定量法(定量PCR法)を確立する。両手法を使い,大気粒子に含まれる微生物を経時的に計数し,氷核活性種の森林内外での動態と分布を定量的に理解する。
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Research Products
(37 results)
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[Journal Article] Atmospheric hydroperoxides measured over a rural site in central Japan during spring: Helicopter-borne measurements2018
Author(s)
Watanabe, K., Yachi, C., Song, X.J., Kakuyama, S., Nishibe, M. and Jin, S.J.,
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Journal Title
Journal of Atmospheric Chemistry
Volume: Vol. 75, No. 2
Pages: 141-153
Int'l Joint Research
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