2018 Fiscal Year Annual Research Report
微小粒子状物質(PM2.5)とその成分曝露がもたらす妊婦・胎児の健康影響評価
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18H03388
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
道川 武紘 東邦大学, 医学部, 講師 (80594853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸隈 誠一 九州大学, 医学研究院, 教授 (50380639)
高見 昭憲 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 研究センター長 (00262030)
山崎 新 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 室長 (80391168)
清水 厚 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (90332238)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 黄砂 / 短期曝露 / 常位胎盤性早期剥離 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユーラシア大陸砂漠由来の黄砂に曝露することで全身性の炎症が惹起される可能性が指摘されている。黄砂が飛来した後に循環器疾患や呼吸器疾患の発生が増えるという疫学報告は黄砂による生体影響を示唆している。常位胎盤性早期剥離(早剥)は胎盤における炎症がその引き金になるという説がある。そこで我々はまず短期的な黄砂曝露と早剥との関連性について検討した。レーザー光線により黄砂を計測できるライダー装置が設置されている9都府県における早剥約3千症例(周産期登録データベース2009~2014年)を解析対象とした。急性で速やかに出産となる大部分の症例を念頭に出産日の前日を発症日と仮定し、同じ年同じ月の他の週の同じ曜日を対照日とする時間層化ケースクロスオーバーデザインを利用し、条件付ロジスティック回帰分析を実施した。結果、出産2日前~前日における黄砂曝露と早剥とに正の関連性を観察した。観察された関連性は、大気汚染物質(二酸化窒素、光化学オキシダントや二酸化硫黄)濃度を調整しても維持された。本研究結果は黄砂曝露が周産期合併症とも関連していることを示唆しており、まだ不明な点が多い黄砂の健康影響に新しい知見を追加するものと考える。日本で黄砂はある程度季節が限定された(春先の)自然現象であり、黄砂の予報も行われている。現状ではまず我々の観察した関連性が因果関係にあるかどうか慎重に推論を進めていく必要があるが、もし因果関係にあるとしたら早剥予防につながるような啓発(例えば妊娠後期の妊婦に不要不急の外出を控えるような行動変容を促すなど)ができる可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りデータ収集ができてデータクリーニングを進めたので、疫学統計解析データベースは概ね完成した。黄砂に関する統計解析計画はまとまり、先行して1つの成果をあげることができた(現在論文を投稿中)。計画と大きな狂いはなく研究を進行させている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の大きな目的は、「日本において、妊婦へのPM2.5とその成分曝露による周産期影響(とくに胎児発育への影響)があるのか、影響するとしたらその大きさはどの程度なのか」を調べる事であり、今年度はPM2.5に着目し疫学分析を進めて成果の公表に努める。また分担研究者は環境測定やアウトカム情報の収集を継続し、解析データベースをアップデートする。
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Research Products
(1 results)