2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of pollution diagnosis for coastal environment using seaweed biomarker.
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18H03391
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡村 秀雄 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (90253020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 浩史 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (30161269)
乾 秀之 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (90314509)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 防汚剤 / 褐藻類 / バイオマーカー / 遺伝子変動発現 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
課題①については、初年度に確立した有機物フリーの完全合成培地での2週間の試験条件下で海藻類50株(褐藻17株、緑藻9株、紅藻24株)の増殖特性を評価したところ、23株(褐藻14株、緑藻4株、紅藻5株)の増殖速度定数は0.02~0.18day-1(2週間後に1.5~16倍)の範囲にあり、その他の27株は増殖しなかった。特に、紅藻は褐藻、緑藻に比べて増殖しにくく、ビタミンとEDTAを強化した培地でも増殖しなかった。この培養条件下で増殖した海藻類23株に対して、3種類の防汚剤(銅、ジウロン、シブトリン)の有害性を評価した。暴露2週間での50%影響濃度はシブトリンでは0.1~3.3 ug/l、Diuronでは0.18~43 ug/l、Cuでは6~144 ug/lであり、無影響濃度からも防汚剤の有害性の強さは同様の傾向にあった。これら防汚剤が水生生物に及ぼす有害性の文献値をも用いて種の感受性分布を解析した結果、本研究で得られた海藻類に対する毒性値は甲殻類や魚類に比較して低く、防汚剤に対する海藻類の感受性が高いことが明らかとなった。 課題②については、生育に影響の出ない最大濃度のジウロン溶液を人工海水に添加し、シオミドロを5週間培養した。シオミドロから総RNAを抽出し、RNA-seq受託解析に供した。5000万リードから18551 遺伝子の発現が確認され、ジウロン処理により発現が2倍以上上昇した遺伝子は413種あり、また2分の1以下に低下した遺伝子は333種類あった。発現量が多く、さらに発現変化の大きい遺伝子をそれぞれ5種選抜したところ、発現上昇した遺伝子には、リン酸トランスポーターが複数含まれていた。一方、発現が減少した遺伝子には、リボソームタンパク質が複数含まれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
①については、現在主に使用されている易分解性の防汚剤(トラロピリル、金属ピリチオン)が海藻類に及ぼす有害影響を、ここで開発した試験法を用いて評価する。次に、防汚塗料を塗布した塗料片を含む試験システムで、防汚剤が海水に連続的に供給される場合の有害性を評価することにより、易分解性防汚剤が性能を発揮するメカニズムを明らかにするとともに、海藻類に対する防汚塗料の防汚効果を評価するための試験法の標準化を図る。 ②については、神戸大学海藻類系統株コレクションに含まれる海藻類から、銅やジウロン処理により発現変動が大きかった遺伝子をクローニングする。沿岸域で採取したシオミドロなどの海藻の総RNAを抽出し、選抜したバイオマーカー遺伝子を定量RT-PCRで解析する。これら海藻類を採取した海域の海水中の銅、ジウロンの濃度を測定し、バイオマーカー遺伝子の発現と相関しているか確認し、これら遺伝子が汚染物質のバイオマーカーとして十分な性能を有しているか評価する。
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Research Products
(2 results)