2018 Fiscal Year Annual Research Report
有害金属汚染土壌の迅速処理を可能とするキレート洗浄技術の高度化
Project/Area Number |
18H03399
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90253335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 明雄 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10324104)
真塩 麻彩実 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50789485)
RAHMAN Ismail 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (60773067)
水谷 聡 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80283654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 土壌浄化 / 有害金属 / 環境改善技術 / キレート剤 / 界面活性剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
有害金属汚染土壌に対するキレート洗浄反応の迅速化に向けて、複数の生分解性キレート剤および合成キレート剤を適用して最適な薬剤を探索した。例えば、射撃場跡地の鉛汚染土壌を対象とした検討では、実試料に対してEDTA、EDDS、GLDAを洗浄処理に適用し、キレート濃度・振とう時間・液固比等の影響を検討した。その結果、塩化鉛を添加した模擬汚染土壌では振とう時間10分、液固比2の条件で80%以上の鉛を低減できたが、実汚染土壌では抽出率が低下した。これらを改善する手法として、室内実験において反応性微細気泡を汚染土壌のキレート洗浄に併用した結果、洗浄速度が向上することが分かった。また、ボールミルを用いた湿式粉砕洗浄の手法では、洗浄速度だけでなく洗浄効率も増加した。 金属抽出を促進する機能性界面活性剤の開発については、本年度は、ヒスチジン、トリプトファン、チロシンを骨格に有するアミノ酸型生分解性界面活性剤を新規に合成し、界面化学的特性と抗酸化能力について評価した。アミノ酸側鎖は金属イオンに対する親和性も兼ね備えており、次年度に土壌洗浄へ適用した際にキレート剤との相乗効果が期待される。 土壌洗浄の解析法開発のサブテーマにおいては、海底堆積物の実試料を用いて金属元素のフラクション分析を行った。スペシエーション(存在状態別)解析により、試料全体でイオン交換態が多く含まれていること、造船所付近の測点では人為的影響で炭酸塩態が増加するなどが確認された。キレート剤の基礎物性については、自動滴定装置及び化学平衡ソフトウェアを用いて、洗浄対象元素やアルカリ土類元素に対する各キレート剤および腐植物質の安定度定数を求める手法を確立した。更に、キレート剤及び界面活性剤の生分解性試験のサブテーマでは、試験で用いる多種類のキレート剤について、高速液体クロマトグラフ質量分析法を用いた高感度一斉分析法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトで開発した新しい解析手法および新規洗浄剤の開発について計画以上に進展し、多くの論文が国際学術誌に受理されるとともに、国内外の学会における成果報告も積極的に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究が計画通りに順調に進展したことから、引き続き、有害金属汚染土壌に有用な新規キレート剤及び機能性界面活性剤の探索、洗浄効果の理論的解析と洗浄剤の改良、キレート剤及び界面活性剤の生分解性試験のテーマについて検討を続ける。特に今年度に多数の解析手法を確立できたことから、次年度は実際の汚染試料および土壌洗浄反応に対して適用を進め、本洗浄技術の効率化・迅速化の目標達成につなげる。 実汚染土壌試料への適用で判明した課題については、土壌に含まれている金属化合物(例えば、人為由来では鉛散弾等の風化状況、自然由来では場所毎の主要地質成分の影響)の化学性状と溶解挙動を逐次抽出、表面解析などを用いて調査する予定である。また、機能性界面活性剤については、前年度に開発した薬剤は水溶性の低さや使用できるpH領域が狭いといった欠点があるため、これらの欠点を克服すべく新たな分子設計に取り組む。土壌洗浄に有用であることが確認された新規生分解性キレート剤や生分解性界面活性剤については、本年度確立した解析法を活用して基礎的な物性や分解性挙動を定量的に求めるとともに、種々の特性に及ぼすpHの影響や共存金属イオンの効果についても明らかにする。
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Research Products
(31 results)